現代の日本において、私たちは「美意識」という言葉を大切にしていますが、果たしてそこに確固たる「様式」は存在しているのでしょうか。文筆家として知られる山口周氏は、かつて興味深い視点を提示されました。それは、株式市場において日本の自動車メーカーとドイツのBMWは、同じ「移動手段を作る企業」として認識されていないのではないか、という鋭い指摘です。
山口氏の分析によれば、BMWが提供している価値の正体は、効率的な移動手段というよりも、むしろ「ファッション」に近い領域にあります。ここでいうファッションとは、単なる流行ではなく、自己のアイデンティティを表現するための象徴です。こうした独自の立ち位置を確立しているからこそ、単なる工業製品の枠を超えたブランド力が宿るのでしょう。
スーパーカーブームが教えてくれた「憧れ」の力
かつて、日本の自動車も単なる便利な道具ではありませんでした。2019年10月27日現在の視点で振り返れば、1970年代に列島を熱狂させた「スーパーカーブーム」は、今なお多くの人々の記憶に鮮烈に刻まれています。当時の若者にとって、車は自分のライフステージを象徴するシンボルであり、日常を彩る何物にも代えがたい「憧れ」そのものだったのです。
SNS上でもこの話題は大きな反響を呼んでおり、「昔の車には今の製品にはない『色気』があった」という声や、「効率性ばかりを追い求める現代のものづくりに寂しさを感じる」といった意見が散見されます。消費者の心は、スペックの高さだけではなく、もっと情緒的な、あるいは芸術的な熱量を求めているのかもしれません。
飽和の時代に求められる「作品」としてのものづくり
現代社会において、モノの利便性はすでに飽和状態に達しています。こうした状況下で、企業が生き残るためには「ブランド経営」が不可欠ですが、それは決して容易な道ではありません。単に品質の良い「商品」を作るだけでは、消費者の心に深く突き刺さることは難しく、すぐに他の安価な代替品に取って代わられてしまうでしょう。
私は、これからの日本企業にこそ「作品」を作るという意識が必要だと考えます。作品とは、効率性や合理性を超えた先に存在する、作り手の思想や哲学が具現化されたものです。ビジネスの世界で「アート」が注目されるのは、論理的な正解だけでは差別化ができない時代になったからに他なりません。
もし私たちが、効率の良さという最短ルートだけを選び続ければ、市場というサーキットからいつの間にかコースアウトしてしまう危険性があります。2019年10月27日という、価値観が激変する過渡期において、もう一度「ものづくり」の本質を見つめ直すべきでしょう。美意識を様式へと昇華させる試みが、今まさに求められているのです。
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