昭和という激動の時代に、テレビ画面を通じてお茶の間に笑いと衝撃を届け続けた伝説の放送作家をご存じでしょうか。森浩美氏が師と仰ぐ奥山コーシン(〓伸)氏は、「8時だョ!全員集合」や「なるほど!ザ・ワールド」といった、今なお語り継がれる驚異的な視聴率を誇った「お化け番組」の数々を手掛けたヒットメーカーです。彼は青島幸男氏や大橋巨泉氏といった、一筋縄ではいかない強烈な個性を持つスターたちを見事に操り、番組を成功へと導いた「猛獣使い」のような存在でもありました。
2019年11月23日、森氏は自身の原点である師匠との思い出を振り返っています。森氏が奥山氏に弟子入りしたのは、今から約40年前の弱冠20歳の頃でした。当時の放送業界は現在よりも遥かに厳しく、丁稚奉公のような側面もあったことでしょう。しかし、森氏は早々に作詞家への転身を志します。普通であれば「せっかく教えたのに、なめているのか」と一喝されそうな場面ですが、奥山氏は「バカヤロー、好きなことをやれ」と、力強くその背中を押してくれたのです。
「言い訳するなら笑わせろ」という人生の金言
奥山氏の口癖は、愛のある「バカヤロー」でした。数ある奥山語録の中でも、特に森氏の心に深く刻まれているのが「言い訳するなら笑わせろ。俺を笑わせたら許してやる」という言葉です。これは、数多の言い訳を考え抜いて業界を生き抜いてきた自分を、小手先の嘘で騙せると思うなという戒めでもあります。単なる厳しさではなく、ユーモアを持って責任を取れというこの教えは、プロとして生きる覚悟を説く「放送作家」という職種ならではの粋な哲学と言えるでしょう。
SNS上では、この師弟関係に対して「これぞ昭和の師弟愛、熱すぎる」「今の時代にこそ必要な言葉かもしれない」といった称賛の声が上がっています。また、自分の非を認める際にもウィットに富んだ返しを求める姿勢に、「クリエイターとしての凄みを感じる」という意見も散見されました。こうした厳しいけれど温かい指導が、多くのミリオンセラーを輩出する作詞家としての森氏を形作ったのは間違いありません。放送作家とは、番組の構成やセリフを専門に書く、いわば番組の設計図を作るプロフェッショナルのことです。
80歳を超えた現在も、奥山氏はトークライブを精力的にこなすなど、現役感たっぷりに活動を続けています。顔を合わせるたびに「早く恩返ししないと死んじゃうよ」とおどけて見せる師匠に対し、森氏は「それって死ぬ死ぬ詐欺ですよ」と軽妙なジョークで返せるようになりました。私は、このような遠慮のない言葉を交わせる関係こそが、真の意味での「自立」と「敬意」の表れだと強く感じます。師匠の前で背筋が伸びる緊張感を持ちつつ、笑顔で語り合える。そんな師弟関係は、まさに人生の宝物と言えるのではないでしょうか。
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