「芸術品は一握りの富裕層だけの道楽」という固定観念が、今まさに塗り替えられようとしています。かつては数百万円、数千万円という価格が壁となり、一般のファンには手の届かなかった名画や高級楽器の世界。しかし、2019年12月10日現在、スタートアップ企業が展開する「アートシェアリング」という新しい波が、芸術を所有する喜びを民主化しています。
その先駆けとして注目を集めているのが、2018年に設立されたANDART(アンドアート)です。彼らが提供するのは、高額な美術品を「1口オーナー」として分割保有できるプラットフォームです。この革新的な仕組みにより、誰もが少額からアート作品の共同オーナーになることが可能となりました。ネット上では「推しの作家を応援できる」「少額でオーナーになれるなんて夢がある」と、若層を中心に大きな反響を呼んでいます。
わずか2時間で1000万円分が完売!驚異の熱狂
驚くべきことに、ユニクロとのコラボでも名高い現代アーティスト、KAWS(カウズ)の作品のオーナー権1000万円分が、わずか2時間で完売するという事態が発生しました。インターネットを通じた先着順の販売には約200人が殺到し、現代アートへの潜在的なニーズの高さを証明したのです。これは単なる投資ではなく、作品を身近に感じたいという純粋な所有欲の現れと言えるでしょう。
オーナーになる特典は、単なる権利保有に留まりません。限定の展示会や作者との交流会への招待、さらには公共の場で展示される際にオーナーとして名前が掲出されるなど、作品との深いつながりを実感できる工夫が凝らされています。シェアリングエコノミーとは、場所やモノを共有(シェア)することで新しい価値を生む仕組みですが、アートの世界でもこの概念が最高に機能しています。
職人とつながる、楽器シェアリングの新しい形
一方、演奏家たちの悩みを解決するサービスも登場しました。スタートアップ企業のatsumariは、高価な楽器の貸し借りを仲介する日本初の本格的なマッチングサービスを展開しています。100万円を超えるバイオリンやギターを、1週間単位から手軽に試奏できるのです。実際に触れて、納得してから購入できる仕組みは、演奏者にとってこれ以上ない安心材料となるはずです。
楽器のシェアで最も難しいのは、その「真贋」や「状態」の判断でしょう。この点、atsumariでは現役の楽器職人が適正価格を判定するシステムを導入しており、プロの目利きが介在することで信頼性を担保しています。制作者である職人が直接出品するケースもあり、ファンと作り手がダイレクトにつながる新たなコミュニティとしての側面も期待されています。
編集者が見る「アート×シェア」の可能性
日本の美術品市場は世界全体のわずか3.6%に過ぎないと言われますが、これは関心がないのではなく、入り口が狭すぎただけではないでしょうか。今回のシェアリングサービスの台頭は、閉鎖的だったアート業界に風穴を開けるものです。1万円から始まる「オーナー体験」は、教育や教養としての美術を、よりエモーショナルな「自分事」へと変えてくれるに違いありません。
もちろん、権利価格が下落するリスクや、楽器の破損トラブルなど、課題がゼロではありません。しかし、運営側による修理補償や相互評価システムの導入により、リスクを抑えつつ楽しむ土壌は整いつつあります。2019年を境に、芸術は「遠くから眺めるもの」から「みんなで支え、共有するもの」へと進化していく。そんなワクワクする時代の幕開けを感じずにはいられません。
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