1960年代の映画界に革命を起こした不世出のミューズ、アンナ・カリーナ氏が2019年12月14日に79歳でこの世を去りました。彼女はヌーヴェルヴァーグの旗手であるジャン=リュック・ゴダール監督の最愛のパートナーであり、世界中の若者を虜にしたカルチャーアイコンです。SNS上でも「彼女の瞳やファッションは今見ても新しすぎる」「永遠の憧れ」といった、哀悼と絶賛の声が鳴り響いています。
そんな彼女のコケティッシュな魅力が爆発している作品が、1961年製作の映画『女は女である』でしょう。本作は、子供が欲しいストリッパーのアンジェラと、それを拒む恋人、そして彼女に思いを寄せる友人による奇妙な三角関係を描いた艶笑喜劇です。艶笑喜劇とは、大人の男女の恋愛や心理の機微を、ユーモアと少しの色気を交えて軽妙に描いたコメディ映画のジャンルを指します。
当時のゴダール監督はアメリカのミュージカル映画やハリウッドの喜劇を熱愛しており、本作にはそのオマージュが至る所に散りばめられています。作中でジャン=ポール・ベルモンド氏が演じる役名が、名監督エルンスト・ルビッチ氏を文字っている点も映画ファンをニヤリとさせますね。映画評論家の芝山幹郎氏も、多感な時期に彼女の映画に魅了され、映画館を出た後に街を彷徨ったという甘酸っぱい思い出を語っています。
本作の素晴らしい点は、なんといってもゴダール監督特有の鮮烈な色彩感覚です。赤いニットに白いコート、そして青いアイシャドウというトリコロールを意識したコントラストは、観客の視界に鮮やかに焼き付きます。こうした色使いのセンスは、現代のクリエイターたちにも多大な影響を与え続けており、お洒落な映画の代名詞としてSNSでもたびたびトレンドに上っています。
さらに本作は、単なるコメディにとどまりません。メロドラマの文脈をベースにしながら、現実を切り取るドキュメンタリーの手法や、犯罪映画のような陰影を持つフィルム・ノワールのエッセンスが絶妙に融合しています。映画の常識を覆すようなゴダール監督の果敢な実験精神によって、鑑賞後には何とも言えない不思議で心地よい余韻が残る名作に仕上がりました。
ですが、最大の引力はやはりアンナ・カリーナ氏自身が放つ特別な空気感にあります。往年の大女優たちの系譜を継ぎながらも、1960年代特有の生意気で反抗的なエネルギーを全身から発散していました。まさに妖精のようなピュアさと、男性を破滅させる魔性の女「ファム・ファタル」の危うさが同居した彼女の姿は、時代を超えて映画ファンの心を掴んで離さないのです。
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