「無印良品」を展開する良品計画は、2019年6月3日現在、北欧フィンランドの首都ヘルシンキ市で、都市の未来を見据えた画期的な挑戦を始めています。その主役となるのが、同社がデザインを手がけた自動運転シャトルバス「GACHA(ガチャ)」です。2019年3月にヘルシンキ市内でテスト走行を実施し、年内にはフィンランド国内の3都市で予定されている自動運転の実証実験に参画することが決定しています。良品計画は、このバスのデザインを通じて「無印良品」のブランドの世界観を強くアピールし、地域社会に深く根付くブランドとしての定着を目指しています。
この取り組みは、単なる交通手段の提供に留まりません。金井政明会長は、「車のデザインがどんどん偉そうに、速そうに、高そうに変わっていく社会とはいかがなものか」と、現代の自動車産業、ひいては消費社会全体への問題提起を行っています。激化する自動運転の開発競争に対し、良品計画はあえて「無印良品」らしさを込めたデザインで一石を投じようとしているのです。それは、極度に機能性や先進的なスタイルを追い求めるのではなく、利用者が「使いやすく、居心地がいい」と感じられる、人間に寄り添ったデザインを追求する姿勢に表れています。
「GACHA」のデザインに込められたメッセージは、利用者への親しみやすさと快適性です。特に目を引くのは、フロントとリアの区別がないユニークな形状や、ヘッドライトとコミュニケーションスクリーンが一体となった発光ダイオード(LED)のライトベルトです。車内の内装にはラウンド型(円形)のベンチシートを採用し、大量輸送を目的とする従来のバスとは一線を画す、こぢんまりとしたサイズ感になっています。これは、移動する空間そのものに「無印良品」が提唱する「感じ良いくらし」を具現化しようとする試みだと言えるでしょう。
なぜ良品計画は、自動運転のフィールドとしてフィンランドを選んだのでしょうか。金井会長は、ヘルシンキ市が公共交通として自動運転の実証実験を手がける計画に深く共感したことを理由の一つに挙げました。加えて、フィンランドが持つ「文化と自然の共生」というテーマが、「無印良品」が追究するブランドテーマと非常に近い親和性を持っていることも重要な要因だとしています。自然と調和したデザインを志向する消費者が多いことや、一人当たりのGDP(国内総生産)の高さも同国に注目する理由です。フィンランドのヤン・ヴァパーヴオリ市長も、雪や氷の上を走行する過酷な環境を乗り越えれば、その信頼性の高さから「どの街でも使える」バスになると期待を寄せています。
金井会長は、「文明や経済に振り回される社会や、お金だけを追求する時代は終わらせた方がいい」とまで述べており、自動運転車のデザインを手がけ、実証実験に参画することで、企業姿勢やブランドイメージのさらなる浸透を図ろうとしています。良品計画が長年掲げてきた、消費社会へのアンチテーゼとしての「感じ良いくらし」は、今や「感じ良い社会」へと変化していると同会長は語っています。これは、単なる商品の販売だけでなく、地域社会の課題解決にも貢献するビジネスへと活動の領域を広げようとする、強い意志の表れでしょう。
SNSでも注目を集める無印良品の新たな挑戦
良品計画のフィンランドでの挑戦は、SNS上でも大きな反響を呼んでいることでしょう。「無印良品がバスのデザイン?」といった驚きの声とともに、「無印らしいシンプルさが未来の公共交通にぴったり」「内装が居心地良さそう」「ぜひ日本でも走らせてほしい」といった期待の声が多く見受けられるはずです。特に、その丸みを帯びた愛らしいデザインと、環境や社会との調和を目指す企業姿勢が、ミレニアル世代などの意識の高い消費者層に共感を呼んでいると推察されます。広告宣伝に頼るのではなく、この自動運転バスや、2019年11月に開業予定の北欧最大級の「無印良品」店舗、そして商品そのものを通じて、フィンランドの消費者に「無印良品」の価値観をどう感じてもらえるのか、この挑戦は良品計画にとって非常に重要な試金石になることは間違いないでしょう。
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