2019年6月1日深夜に発生した、横浜市の新交通システム「シーサイドライン」の無人運転車両による逆走衝突事故は、その後の調査で運行を制御する中枢システムに異常があった可能性が浮上しています。この事態に対し、運営会社である横浜シーサイドラインは2019年6月2日に記者会見を開き、驚くべき説明を行ったのです。それは、「列車の逆走は今までになく、全く想定していなかった」という衝撃的なものでした。乗客が重軽傷を負った重大事故にもかかわらず、システムの設計段階で「逆走」が考慮されていなかったという事実は、無人運転に対する私たちの信頼を根底から揺るがしかねない問題だと感じています。
事故の状況を詳しく見ますと、運行はコンピューターによる自動列車運転装置、通称「ATO」(Automatic Train Operation)で制御されています。このATOは、駅と車両の双方に設置され、信号をやり取りすることで列車の進行方向の切り替えや出発のタイミングなどを自動で決めているのです。しかし、今回の事故では、駅側のATO記録には異常がなかったにもかかわらず、車両側のATOと信号の通信において何らかの不具合が生じた可能性が指摘されています。具体的には、駅側から走行指示の信号が送られた直後、列車が急に逆走を始めたとされており、駅側の指令記録には逆走を指示した形跡は残っていませんでした。つまり、何らかのシステム的な要因で、列車が意図しない挙動を起こした可能性が高いと言えるでしょう。
この事故は、シーサイドラインの運行に甚大な影響を及ぼしています。平日には1日あたり約5万人もの人々が通勤や通学で利用する路線ですが、2019年6月2日までの2日間で合計約3万6千人の利用者に影響が出ているとのことです。運営会社の三上章彦社長は「多くの方がけがをされた。多大なご迷惑をおかけして申し訳ない」と深く謝罪し、代替手段としてバスの運行を手配するなど対応に追われています。しかしながら、事故原因が特定できていないことから、運行再開の時期については「決まっていない」というのが現状であり、3日以降も復旧のめどは立っていません。
無人運転システムの安全設計に疑問、SNSでも広がる不安の声
今回の事故で特に注目すべき点は、シーサイドラインの安全機構に関する設計思想です。同社によると、前進している際に不具合が発生した場合は自動的に停止する仕組みは導入されているものの、逆走については「想定されていなかった」ために自動でブレーキがかかる仕組みがなかったというのです。指令所が異常を把握したのは、車両が車止めに衝突した後であったと説明されています。無人運転という最先端の技術を導入しているにもかかわらず、最も基本的な安全対策であるはずの「逆走時の自動停止」が欠けていたことは、技術者として、そして公共交通機関の運営者として、非常に大きな見落としであったと厳しく指摘せざるを得ません。
この事故と運営会社の「想定外」という説明は、SNSでも大きな反響を呼んでいます。「無人運転なのに逆走を想定しないなんて怖すぎる」「技術は進化しているのに、基本的なリスクマネジメントができていないのではないか」といった、無人運転システムの安全性に対する根本的な不安の声が数多く見受けられます。また、事故当初は約30人とみられていた乗客が、2日午後の会見で約50人だったと訂正された点や、神奈川県警が当初「搬送15人」としていたうち負傷者は重傷6人、軽傷8人の計14人だったと訂正された点についても、「情報公開の正確性が疑われる」といった厳しい意見も出ています。情報の混乱は、利用者や社会の不信感をさらに高めてしまう要因になります。
運輸安全委員会の鉄道事故調査官は、事故翌日の2019年6月2日に現場で調査を実施しました。岩田信晴・次席鉄道事故調査官は同日夕方に報道陣の取材に応じ、事故車両の連結部分が湾曲し、激しく損傷していた状況を報告しています。現時点では具体的な原因はまだ特定できていませんが、「運行記録の解析や事故車両の確認、乗客への聞き取りなどを進め、事故原因についてあらゆる可能性を検討して調査する」としており、徹底した原因究明が強く求められています。一刻も早く原因を把握し、二度とこのような事故が起きないよう再発防止策を確立することこそが、公共交通機関の運営会社として果たすべき最優先の責務であると考えられます。
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