街の至る所で見かける調剤薬局が、いま大きな転換期を迎えています。国内3位のクオールホールディングスが製薬事業への参入を果たし、業界2位の日本調剤も巨大な自社工場のフル稼働を開始しました。これまで「薬を仕入れて売る」ことが専門だった彼らが、なぜ「自ら薬を造る」という大胆な決断に至ったのでしょうか。その背景には、国が進める医療費抑制の波と、従来のビジネスモデルが通用しなくなった危機感があるようです。
SNS上では「薬局で自社ブランドの薬が出てくる時代になるの?」「調剤報酬が下がるなら、新しい稼ぎ方を模索するのは当然かも」といった、業界の先行きに注目する声が多数上がっています。これまでの薬局は、病院のすぐそばに構える「門前薬局」として、処方箋を待つだけで安定した収益を得ることができました。しかし、現在の診療報酬改定はその構造を厳しく否定し、付加価値のない薬局の経営を揺るがしているのです。
医薬品の「SPA」化!自社製造で収益性を劇的に改善
クオールは2019年08月に藤永製薬を買収し、自社で開発から製造、販売までを一貫して行う「医薬品SPA(製造小売)」への道を選びました。SPAとは、アパレル業界のユニクロのように、中間業者を排除して自社で全て完結させる手法のことです。中村敬社長は、現場で吸い上げた患者さんの声を直接開発に反映できるメリットを強調しています。グループ内で薬を調達できれば、卸値に左右されず利益率を確実に底上げできるでしょう。
一方、日本調剤は2019年度より茨城県つくば市の大型工場をフル稼働させ、年間100億錠という圧倒的な生産体制を整えました。同社が狙うのは、特許が切れた「後発医薬品(ジェネリック)」の巨大市場です。自社の薬局で販売するだけでなく、他社の薬局への外販比率を高めることで、調剤報酬に依存しない収益基盤を構築しようとしています。三津原庸介社長が語る「将来は調剤以外が稼ぎ頭になる」という予測は、もはや夢物語ではありません。
ドラッグストアとの競争激化と、求められる薬局の真価
薬局が変革を急ぐ理由の一つに、2018年度の診療報酬改定による利益の大幅減が挙げられます。国は、単に薬を渡すだけの場所から、24時間対応や在宅医療を支える「かかりつけ薬局」としての機能を求めています。さらに、ウエルシアなどの大手ドラッグストアが猛烈な勢いで調剤併設店を増やしており、既存の調剤専業薬局はシェアを奪われかねない状況です。今後は、コスト競争力と専門性の両立が生き残りの絶対条件となるはずです。
個人的な視点ではありますが、この「製薬への垂直統合」は非常に合理的な防衛策であると感じます。国の政策一つで利益が削られる不安定な業態から脱却し、メーカーとしての機能を持つことは、患者にとっても安定供給という安心材料に繋がるからです。ただし、利益追求に偏りすぎて、薬剤師の本来の役割である「服薬指導」がおろそかにならないよう注視する必要があるでしょう。2019年12月26日、調剤大手が掲げたこの挑戦は、業界の勢力図を塗り替える一歩となりそうです。
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