2019年10月12日に日本を襲った台風19号は、各地に甚大な爪痕を残しました。なかでも北陸新幹線が受けた衝撃は、これまでの鉄道史を揺るがすほどの事態となっています。千曲川の堤防決壊に伴い、長野市にある車両基地が冠水したことで、全車両の約3分の1にあたる10編成120両が水没するというショッキングな光景が広がりました。この未曾有の事態に対し、JR東日本は2019年10月25日の全線運転再開を発表したものの、その道のりは決して平坦なものではありません。
SNS上では、泥水に浸かった新幹線の姿を見て「信じられない」「生活の足が奪われて困惑している」といった悲痛な声が次々と上がっています。これまで鉄道業界では、雪害や強風への備えは万全を期してきました。しかし、今回のような大規模な「河川氾濫による車両基地の浸水」は、まさに盲点だったと言わざるを得ません。車両が水に浸かれば、精密な電子機器が密集する床下機器が致命的なダメージを受けるため、修理ではなく廃車を検討せざるを得ない厳しい現実に直面しているのです。
リスク管理の再定義と航空輸送の再評価
運行再開後の本数は通常の8割程度に留まる見通しであり、2019年の年末から2020年の年始にかけての帰省ラッシュへの影響は避けられそうにありません。今回の教訓は、私たちが当たり前だと思っていたインフラの脆弱性を浮き彫りにしました。災害大国である日本において、今後は「想定外」という言葉で片付けるのではなく、あらゆるリスクを徹底的に洗い出すBCP(事業継続計画)の策定が急務でしょう。車両基地を高台に設置する、あるいは止水壁を強化するといった物理的な対策が強く求められています。
一方で、この非常事態において存在感を示しているのが航空業界の柔軟な対応力です。全日空(ANA)は新幹線の運休を受け、羽田と富山・小松を結ぶ路線の機材を大型化し、さらに臨時便を設定することで輸送力の確保に奔走しています。一時は鉄道の利便性に押されていた空の便ですが、災害時のバックアップとしての役割が改めて高く評価されました。多角的な交通手段を維持する「モーダルミックス」の重要性を、私たちは今、改めて深く認識すべき時期に来ているのではないでしょうか。
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