出光興産・岡田副社長が語る「無駄飯の食い方」の真意とは?恩師の教えが支えた経営統合の舞台裏と、エネルギーの未来への決意

広島湾の穏やかな海上に船を出し、ひたすら海水の採取と分析に没頭していた青年時代。現在、出光興産で副社長という重責を担う岡田智典さんが、自身の原点として大切にしている記憶があります。それは、2019年07月17日に明かされた、広島大学工学部および大学院時代における恩師との熱い交流の物語です。当時、研究室の助教授を務めていた瀧本和人先生は、年齢が10歳ほどしか離れていないこともあり、岡田さんにとって兄のような存在でもありました。

研究生活は決してスマートなものばかりではありません。時には高価な採水機を海に落としてしまい、底引き網を駆使して先生と一緒に必死に拾い上げるといった、今では笑い話となるような泥臭いエピソードも。そんな日々の中で、瀧本先生が口癖のように繰り返していたのが「君たちは無駄飯の食い方が足らん」という不思議な言葉でした。この一見すると突き放したような表現の裏には、学問や仕事に向き合う上での本質的な哲学が込められていたのです。

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「無駄飯」が育んだ、仮説を深掘りする力

当時の岡田さんには、その言葉の真意がすぐには理解できなかったといいます。しかし、後に経験を積む中で、それが「目先の効率だけを求めず、あえて遠回りをしてでも多角的に物事を取り組み、仮説を深く掘り下げることの重要性」を説いていたのだと気づかされました。ここで言う「無駄飯」とは、決して怠けることではありません。正解のない問いに対して、試行錯誤を繰り返しながら本質に迫ろうとする、創造的なプロセスのことなのです。

岡田さんは大学を卒業後、昭和石油(現在の出光興産の前身の一つ)へと入社します。1990年代の前半には、製油所において石油製品の生産計画を管理する係長という重要なポジションに就きました。生産計画とは、原油からガソリンや灯油など様々な製品を、需要に合わせて最も効率的かつ低コストで作り出すための複雑な設計図を描く仕事です。規格の遵守と利益の最大化という、相反する要素のバランスを追求する日々は、まさに試行錯誤の連続でした。

経営統合という大義を支える恩師からの手紙

困難な壁にぶつかるたび、岡田さんの脳裏に響いたのは、あの「無駄飯」を説いた恩師の言葉だったそうです。そして2016年、岡田さんは本社へと帰任し、出光興産と昭和シェル石油という業界の巨頭同士による経営統合の担当を命じられました。異なる企業文化を持つ二つの組織を一つにまとめるという、日本経済にとっても極めて重要な局面において、再び瀧本先生からの力強い激励が岡田さんのもとへと届けられることになります。

先生からの手紙には「日本の未来、業界の未来の大義を全うしてほしい」という熱いメッセージが綴られていました。経営統合とは、単なる規模の拡大ではありません。日本のエネルギーを安定的に供給し続けるという公共の利益を果たすことこそが、その真の目的=「大義」であると岡田さんは深く胸に刻みました。この手紙は、自分を奮い立たせるための心の拠り所として、2019年07月17日現在も常にかばんの中に入れて持ち歩いているそうです。

ネット上のSNSでは、このエピソードに対し「効率至上主義の現代だからこそ、無駄を恐れない姿勢に救われる」「厳しい言葉の中に愛がある師弟関係が素晴らしい」といった共感の声が広がっています。私自身も、最短距離で結果を出すことが求められるビジネスの世界において、あえて「無駄飯」を食う余裕を持つことこそが、予期せぬ困難を乗り越えるための「思考の体力」を養うのではないかと感じ、深い感銘を受けました。

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