2019年6月5日、電力業界に大きな変革をもたらす可能性を秘めた「仮想発電所」(VPP:Virtual Power Plant)の動向が注目を集めています。再生可能エネルギー(再エネ)の普及拡大に伴い、発電量が天候に左右されやすいという課題を克服し、電力需給の安定化を実現する切り札として期待されているのがVPPです。この新しい取り組みは、外資系企業や異業種からの参入も相次ぎ、熾烈な先陣争いが繰り広げられている状況です。
VPPとは、個々の家庭や工場などに分散して存在する太陽光発電や蓄電池、電気自動車(EV)といった小さなエネルギー設備を、あたかも一つの大きな発電所のように統合し、遠隔で制御するシステムを指します。これにより、電力会社はこれまでコントロールが難しかった分散型電源を、まるで一つの電源のように扱うことができるようになります。専門的に言えば、これらの分散型電源を統合して電力需給のバランスを調整する能力を「調整力」と呼びますが、VPPはこの調整力を市場に提供するための重要な仕組みなのです。
特に、太陽光発電や風力発電といった再エネは、化石燃料を使う火力発電のように、必要に応じて発電量を増減させることが難しく、電力系統の不安定化要因となることがあります。しかし、VPPによって、各地の蓄電池などにためた電気を必要な時に放電したり、工場などの電力消費量を遠隔で抑えるデマンドレスポンス(DR)を行ったりすることで、この変動を吸収し、需給を安定させることが可能になるのです。具体的には、このDRは、電力の供給がひっ迫しそうな時に、需要家(電気を使う側)に働きかけて使用量を抑制してもらうことで、停電リスクを回避する取り組みと言えるでしょう。
異業種・外資がリードする新ビジネスの波
VPPの構築と運用には、高度なエネルギーマネジメント技術と、多数の分散型電源を束ねるプラットフォームが必要です。そのため、従来の電力会社だけではなく、IT技術を持つ企業や、分散型電源を多く持つ異業種の参入が目立っています。例えば、蓄電池を供給するメーカーや、多数の自動販売機を所有する飲料メーカーなどが、VPPの実証実験に積極的に参加していると報じられています。自動販売機のように多数設置され、かつ遠隔制御が比較的容易な設備は、VPPの調整力として大きなポテンシャルを持っているからです。
また、このVPPビジネスは、世界的な再エネシフトの流れの中で、海外でも先行事例が多く、外資系企業の技術やノウハウが日本市場に持ち込まれている点も特徴的です。再エネの大量導入が進む欧米では、すでにVPPが電力系統の安定化に不可欠な役割を果たしており、その技術競争力は非常に高いものがあります。この技術の導入は、日本のエネルギー市場に新たな競争と技術革新をもたらすでしょう。
このVPPを巡る動きに対するSNSでの反響を見てみると、「ようやく再エネが本格的に安定電源化する兆しだ」「電力自由化の次のステップとして期待できる」「蓄電池やEVの普及と連動すれば、個人の電力貢献度が高まりそうだ」といったポジティブな意見が多く見受けられます。一方で、「セキュリティ面や個人情報の取り扱いが懸念される」「システム構築のコストが高そう」といった慎重な意見も散見され、新しい技術に対する期待と課題の両面が議論されていることが伺えます。
VPPが実現する電力システムの未来
編集者としての私の見解ですが、VPPは電力システムにおけるパラダイムシフト、つまり根本的な考え方の転換を促す決定的な技術だと考えられます。これまでの電力システムが、少数の巨大な集中型発電所から一方向に電気を供給するトップダウン型であったのに対し、VPPは多数の小さな電源が相互に連携し、需給をきめ細かくコントロールする分散協調型のシステムへと移行させる原動力となるからです。これにより、災害時にも機能しやすいレジリエンス(強靭性)の高い電力ネットワークが実現に近づくでしょう。
また、VPPは単に電力の安定化に寄与するだけでなく、新たなビジネスモデルの創出にも繋がります。VPPに参加する家庭や企業は、余剰電力を市場に提供することで収益を得る機会が生まれますし、VPPのプラットフォームを提供する事業者も、その仲介料やシステム利用料で収益を上げることが可能になるでしょう。エネルギーを「使うもの」から「創り、貯め、取引するもの」へと変えるVPPの可能性に、今後も強く注目していくべきでしょう。
コメント