2019年08月19日、難病に苦しむ患者さんやそのご家族にとって、大きな希望となるニュースが飛び込んできました。日本大学や東京薬科大学といった国内のアカデミアが、脊髄や筋肉といった「薬が届きにくい場所」へ確実に治療成分を送り届ける、画期的な技術開発を加速させているのです。
ALS(筋萎縮性側索硬化症)や筋ジストロフィーは、現代医学でも克服が難しい指定難病として知られています。SNS上では「少しでも進行を遅らせたい」「新しい治療の選択肢が欲しい」といった切実な声が常に溢れており、今回の大学による研究成果には、多くのユーザーから熱い視線と期待のコメントが寄せられています。
なぜ脊髄や筋肉に薬を届けるのは難しいのか?
そもそも、なぜこれらの病気の治療は困難を極めるのでしょうか。その大きな理由は、私たちの体が持つ強固な防御システムにあります。脊髄の周囲にある血管には、外敵から神経を守るための特殊なバリア機能が備わっており、これが本来届けたいはずの薬の成分までも、侵入者と見なしてブロックしてしまうのです。
また、筋肉組織は他の臓器と比較すると血管が少ないという特徴があります。通常、お薬は血流に乗って全身へと運ばれますが、道となる血管が細く少ない場所では、どうしても有効成分が不足しがちになります。このように、患部へ薬をデリバリーする難しさが、創薬の大きな壁として立ちはだかってきました。
さらに、ビジネス的な側面も無視できません。認知症の国内市場が数千億円規模であるのに対し、ALSなどの難病は市場が小さく、一説には1つの新薬開発に2000億円もの巨費を投じる製薬企業にとっては、なかなか手が出しにくい領域でした。だからこそ、利益を第一の目的としない大学の研究が極めて重要な役割を果たすのです。
日本発!鼻から脊髄へ、超音波で細胞へ届ける魔法の技術
こうした状況を打破すべく、日本大学の金沢貴憲専任講師らは驚くべき手法を考案しました。なんと「鼻の奥」から神経の隙間を通り、脊髄や脳幹へダイレクトに薬を届ける技術です。薬を包んだ極小の「ナノカプセル」の表面に、細胞膜を通り抜けやすくするペプチド(アミノ酸がつながった物質)を付着させました。
この手法は、既にALSのマウス実験で運動能力の低下を防ぐ効果が確認されています。金沢講師は、脊髄損傷などの治療への応用も見据えており、2029年までの治験開始を目指しています。鼻から薬を入れるだけで脊髄の病気が治るかもしれないという未来は、これまでの常識を覆すインパクトを秘めているでしょう。
一方、東京薬科大学の根岸洋一教授は「超音波」を活用したユニークなアプローチに挑戦中です。筋肉の細胞に、タンパク質を作る設計図となる「RNA(リボ核酸)」を注入したカプセルを届け、そこに超音波を当てることで細胞膜に一時的な穴を開け、効率よく成分を細胞内へ送り込むことに成功しました。
編集者が見る「難病創薬」の課題と国の役割
個人的な見解を述べさせていただくと、今回の研究成果は日本の科学力の底力を示す素晴らしい一歩だと感じます。しかし、研究室で生まれた「魔法の杖」が実際の薬として病院に並ぶまでには、莫大な費用がかかる臨床試験という試練が待っています。民間企業が二の足を踏む市場であれば、なおさら国が積極的に支援すべきです。
海外でも同様の基礎研究は進んでいますが、日本がこの分野でリーダーシップを取ることは、自国の患者さんを救うだけでなく、世界の医療への貢献にも繋がるはずです。効率的に薬を届ける「ドラッグデリバリーシステム(DDS)」の進化が、難病という言葉を過去のものにする日が来ることを切に願ってやみません。
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