塗料業界に激震が走るトップ人事が発表されました。日本ペイントホールディングス(HD)は、2019年09月20日の記者会見にて、田中正明会長が2020年01月01日付で社長兼最高経営責任者(CEO)を兼務することを明らかにしました。田中氏は元産業革新投資機構(JIC)の社長を務めた経歴を持ち、米系銀行の頭取として海外の金融最前線で戦ってきた、まさに「グローバル経営のプロ」と呼ぶにふさわしい人物です。
今回の人事の背景には、筆頭株主であるシンガポールのウットラムグループとの強固な関係性が見え隠れします。同グループを率いるゴー・ハップジン氏の意向を受け、2019年03月に会長へ招聘された田中氏が、ついに実務の全権を掌握する形となりました。SNS上では「金融界の重鎮が製造業のトップとしてどう舵を切るのか」「外資の影響力がさらに強まりそう」といった、期待と注目の入り混じった声が数多く寄せられています。
巨大資本ウットラムとの「アライアンス」が握る鍵
田中氏は会見の席で、ウットラムグループとの連携について「アライアンス(戦略的提携)は極めて重要であり、この関係をさらに強化していく」と力強く宣言しました。アライアンスとは、異なる企業同士が共通の利益のために協力し合う体制を指しますが、同社にとってこれは単なる協力以上の意味を持ちます。2018年12月期の連結売上高のうち、中国市場が42%を占める背景には、同グループの強力なネットワークがあるからです。
現在、ウットラムの出資比率は39%に達しており、その影響力は無視できません。過去には1兆円規模の米系塗料大手買収を断念した経緯もありましたが、これもゴー氏の反対が影響したと囁かれています。田中氏は「ワンマン体制ではない」と否定していますが、株主価値の最大化を求めるゴー氏らの期待に応えつつ、日本企業としての独自性をどう保つのか。この繊細なバランス感覚こそが、新体制に課せられた最大の宿題といえるでしょう。
買収戦略の是非とグローバル人材の確保という急務
世界的な業界再編が進む中、日本ペイントHDはM&A(企業の合併・買収)による規模拡大を急いでいます。2019年06月から08月にかけては、トルコのベテックボイヤや豪州のデュラックスといった、現地シェアトップを誇る企業を相次いで買収しました。しかし、デュラックスの買収額は約3000億円にのぼり、市場からは「投資に見合う効果が得られるのか」と、その高値掴みを懸念するシビアな意見も飛び出しています。
巨額投資の成功を左右するのは、結局のところ「人」に他なりません。海外事業が特定の株主頼みになっている現状を打破するためには、社内でのグローバル人材の育成や外部からの優秀なプロ経営者の確保が不可欠です。個人的な見解を述べさせていただくなら、伝統ある日本のメーカーが、外資のスピード感を取り入れつつ真のグローバル企業へと脱皮できるか、今がまさに歴史的な転換点にあると感じています。
田中正明氏という強力なリーダーシップのもと、2020年以降の日本ペイントHDがどのような色で世界を塗り替えていくのか、目が離せません。株主との信頼構築と、果敢な世界戦略の遂行という二兎を追う戦いが、今ここから始まります。伝統と革新が交差する同社の未来は、日本の製造業が進むべき一つの指針を示すことになるのではないでしょうか。次なる一手は、きっと私たちの想像を超えるスピードで繰り出されるはずです。
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