上原ひろみが提示する30代の到達点!10年ぶりのソロアルバム『スペクトラム』で見せる進化とピアノへの愛

世界を舞台に縦横無尽な活躍を続けるジャズピアニスト、上原ひろみさんが、2019年9月18日に待望の新譜『スペクトラム』をリリースしました。ソロアルバムとしては前作『プレイス・トゥ・ビー』以来、実に10年という月日が流れての発表となります。40歳という節目を迎えた彼女は、今作を「自分自身の歩みを記録するための大切な道標」と位置づけており、30代という情熱溢れる季節に積み上げた研鑽の成果が、この一枚に凝縮されているといえるでしょう。

彼女の代名詞とも言える圧倒的な演奏技術は、今作でさらなる高みへと到達しました。特に注目すべきは、複雑なリズムを刻む「変拍子」の扱い方です。変拍子とは、一般的な4拍子や3拍子とは異なり、5拍子や7拍子といった不規則なリズムを指しますが、彼女の手にかかればそれらは極めて自然で心地よいメロディへと昇華されます。難解な音楽理論を感じさせず、聴き手の心にダイレクトに響く旋律を紡ぎ出す作曲センスには、円熟味すら漂っているのではないでしょうか。

「ピアノとの距離がかつてないほど縮まった」と語る彼女の言葉通り、奏でられる音色には驚くほど多彩な表情が宿っています。力強くエネルギッシュな打鍵はもちろんのこと、優しく包み込むような柔らかい響きや、思わず微笑んでしまうような可愛らしい音まで、まさに「光のスペクトル」のように豊かな色彩が広がります。SNS上でも「これまでの攻撃的なスタイルに加え、深みのある叙情性が加わった」と、彼女の表現力の広がりに驚嘆する声が続々と寄せられているようです。

今作の白眉は、名曲「ラプソディー・イン・ブルー」の大胆なカバーにあります。クラシックの枠を超え、ロックやジャズの要素を情熱的にミキシングした構成は、まさに上原ひろみさんにしか成し得ない魔法と言えるでしょう。既存のジャンルを破壊し、再構築していくその姿は、音楽の無限の可能性を私たちに提示してくれます。彼女の演奏を聴いていると、ジャンルの壁などというものは、表現者の情熱の前では無力であることに気づかされます。

スポンサーリンク

自分と楽器が溶け合う極致、40代で見据える新たな地平

演奏中、自分自身とピアノの境界線が曖昧になる瞬間があるという彼女の告白は、アーティストとしての究極の理想像を示しています。楽器を単なる道具としてではなく、自らの身体の一部として一体化させる領域。30代を全力で駆け抜け、一つの到達点に立った彼女だからこそ、その透明な境地に触れることができるのかもしれません。この「無我の境地」とも言える感覚が、今後の40代の活動においてどのように深化していくのか、期待は膨らむばかりです。

一人の編集者として私自身も、彼女の音楽に対するストイックなまでの誠実さに心を打たれました。才能に甘んじることなく、10年というスパンで自己を客観視し、成長を記録し続ける姿勢は、あらゆる表現者にとっての模範となるでしょう。2019年9月28日現在、彼女はすでに次なるステージを見据えています。進化を止めない天才が、これからどのような新しい音の景色を見せてくれるのか、私たちはその目撃者となれる幸福を噛み締めるべきでしょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました