2019年09月28日現在、私たちの食卓に欠かせない「物価の優等生」である鶏卵の価格が異例の急騰を見せています。千葉県を中心に甚大な爪痕を残した台風15号の影響により、卸売価格は9月に入ってから約3割も上昇しました。この事態を受けて、東京都内のスーパーでも1パックあたりの店頭価格を1割ほど値上げせざるを得ない状況に追い込まれており、家計への負担増が懸念されています。
SNS上では「卵まで値上がりするなんてショック」「お月見シーズンなのに悲しい」といった戸惑いの声が溢れています。今回の価格高騰の主因は、台風による大規模な停電です。近年の養鶏場では、防疫のために窓のない「ウインドレス鶏舎」が主流ですが、停電で換気ファンが停止すると、鶏たちが短時間で酸欠状態に陥ってしまいます。千葉県ではこうした悲劇により、多くの鶏が命を落とす事態となりました。
また、生き残った鶏たちも深刻なダメージを受けています。自動給餌機が停止してエサを食べられなくなると、鶏は卵を産む体力を失ってしまうのです。これは業界で「強制換羽(きょうせいかんう)」と呼ばれる、あえて絶食させて産卵を一時休止させる手法に近い状態が意図せず起きてしまったことを意味します。一度リズムを崩した鶏が再び卵を産めるようになるには、少なくとも1〜2カ月の月日を要します。
市場の指標となるJA全農たまごの取引価格は、2019年09月27日時点で1キロあたり200円の大台を突破しました。これは実に1年6カ月ぶりの高値水準であり、台風直前の2019年09月06日と比較しても25%もの跳ね上がりを見せています。卵の供給源として全国第3位を誇る千葉県の機能不全は、他県産の卵の争奪戦を引き起こしており、加工食品メーカーや製菓業者も原料確保に奔走している状況です。
追い打ちをかけるように、季節は食欲の秋を迎えています。コンビニエンスストアではおでんの販売が本格化し、外食チェーンでは「月見バーガー」といった卵を主役にした季節限定メニューが次々と登場しています。これから年末のクリスマスケーキ需要に向けて卵の消費量はさらに増える見込みであり、供給不足が解消されないまま需要期に突入するという、非常に厳しい需給バランスが続くでしょう。
編集者の視点から見れば、今回の騒動は「効率化された近代農業の脆さ」を浮き彫りにしたと感じます。衛生管理を徹底した最新鋭の鶏舎ほど、電気というライフラインへの依存度が高く、災害時のバックアップ体制が今後の大きな課題となるはずです。2019年10月以降には千葉県の生産体制も徐々に回復する見通しですが、それまでは特売の減少や価格維持に耐える、我慢の時期が続くのではないでしょうか。
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