【検証】埼玉県庁の「土建王国」脱却と財政再建の光と影。上田清司知事が挑んだ16年の改革と、今そこにある危機

2019年07月26日、埼玉県政は大きな転換点を迎えています。4期16年にわたる任期を終えようとしている上田清司知事。彼が最も心血を注いできたのは、かつて「土建王国」とまで揶揄された埼玉県の体質を、根本から作り変えることでした。前任の土屋義彦知事時代に築かれた巨大施設群と、それに伴う膨大な借金。その負の遺産を清算すべく、上田知事は「しがらみの一掃」を旗印に掲げ、果敢なリストラを断行してきたのです。

ネット上のSNSでは「県庁の無駄が減ったのは評価できる」という声がある一方で、「職員が減りすぎて行政サービスが回らなくなるのでは」といった不安の声も入り混じっています。実際、上田知事は知事自身の交際費公開や給与削減といった身を切る改革を皮切りに、不要不急の公共工事を次々と見直しました。その徹底ぶりは凄まじく、2003年度に8146人いた一般職員数は、2018年度には6730人にまで削減されています。

特筆すべきは、県民1万人あたりの職員数が全国で最も少ないという点です。これは驚異的な効率化と言えますが、裏を返せば現場の負担が限界に近いことも意味します。さらに、赤字続きだった埼玉高速鉄道などの県出資法人、いわゆる「外郭団体」に民間経営者を導入し、黒字化を達成させた手腕は見事というほかありません。ここで言う「外郭団体」とは、行政が特定の目的のために出資して設立した法人のことで、かつては天下りの温床になりやすい場所でした。

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揺らぐ「財政健全化」の看板と、再燃する県庁舎建て替え論争

上田知事の経営改革により、県がコントロールできる借金である「県債残高」は、2018年度には2兆円を割り込み、就任前より6000億円以上も圧縮されました。しかし、この強引な手法には副作用も伴いました。民間トップと現場社員の軋轢や、自民党県議団からの「職場が疲弊している」という厳しい批判です。そして今、知事の退任を前に、一度は封印された「県庁舎の建て替え問題」が再び浮上し、議会を揺らしています。

現在の埼玉県庁は築60年を超え、老朽化が深刻です。かつて上田知事は、400億円超を要する建て替えではなく、約50億円の耐震補強を選択しました。しかし2019年06月の定例会では、職員の労働環境改善を名目に、自民党が建て替え検討の特別委員会を提案。これが承認されたのです。私は、この動きに「公共工事の復活」という旧態依然とした政治の影を感じざるを得ません。箱物行政への回帰は、これまでの努力を無にしかねない危うさを秘めています。

実際のところ、埼玉県の財政は決して楽観視できる状態ではありません。専門用語で「経常収支比率」という指標があります。これは、地方自治体の財政の余裕度を示すもので、人件費や借金の返済など、毎年決まって出ていくお金が、自由を使える収入に対して占める割合を指します。2017年度の埼玉県はこの比率が96.8%に達しており、家計で言えば「給料のほとんどが家賃やローンで消え、貯金も娯楽もままならない」という非常に硬直した状態なのです。

追い打ちをかけるように、2019年度は幼児教育の無償化などの「扶助費(社会保障費)」が前年比5.6%も増加しました。2025年には埼玉県も人口減少社会に突入すると予測されており、高齢化による医療費増大は避けられません。上田知事が築いた「筋肉質な県庁」という遺産を、次期政権がどう引き継ぐのか。目先の景気対策としての大型工事に逃げるのではなく、真に持続可能な財政運営を貫く覚悟が、今まさに問われているのではないでしょうか。

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