2019年09月28日現在、世界経済の不透明感が強まる中で、産業の根幹を支える資材価格に大きな異変が起きています。米中貿易摩擦の長期化を背景に、アジア市場における石油化学製品や鉄鋼の取引価格が目に見えて下落しているのです。特に米国が保護主義的な動きを強めた2018年03月と比較すると、2019年08月時点では主要な資材が1割から3割も値下がりしており、市場には緊張感が漂っています。
この衝撃的なデータは、日本経済新聞社の「日経NEEDS」が2019年09月半ばに提供を開始した最新資料から明らかになりました。米国が2018年03月、鉄鋼やアルミニウムへの追加関税に踏み切って以降、対中関税は段階的に引き上げられてきました。この1年5カ月の間に、アジアの需給バランスは大きく崩れ、その余波は日本の国内市場にも波及しつつあるのが現状でしょう。安値で流入する輸入品との競争激化が懸念されます。
特に下落が顕著なのは、私たちの生活に身近な家電製品の外装に使われる「ABS樹脂」などの石油化学製品です。この樹脂や、その原料となる「エチレン」は3割を超える大幅な値下がりを記録しました。また、タイヤなどの合成ゴムの原料となる「ベンゼン」も同様に3割安となり、合成繊維の「ポリエステル」も1割前後下落しています。製造現場からは、先行きに対する不安の声がSNS上でも散見され、景気後退への警戒が強まっているようです。
中国の景気減速と供給過剰がもたらす負の連鎖
なぜここまで石化製品の価格が急落しているのでしょうか。その大きな要因は、貿易摩擦をきっかけとした中国国内の景気減速にあります。関税の対象が広範な家電製品にまで及んだことで、汎用性の高い石化製品の需要が冷え込んでしまいました。さらに、中国が国内での生産能力を増強させていることも「需給の緩み(需要に対して供給が多すぎる状態)」を加速させ、価格を下押しする強力な圧力となっているのです。
また、原材料となる原油価格の軟調な推移も無視できません。2018年末にかけて急落した原油価格は、2019年に入り一旦の落ち着きを見せているものの、依然として力強さに欠ける展開が続いています。米中対立という政治的な火種が、実体経済のエネルギー需要や素材需要をダイレクトに蝕んでいる構図が見て取れます。投資家の間では「この冷え込みは一時的な調整では終わらないのではないか」という悲観的な見方も広がっています。
編集者としての視点では、この価格下落は単なる「コスト安」として喜べる事態ではないと考えます。確かに原材料費が下がる側面はありますが、それは同時に世界的な消費の冷え込みを意味しているからです。米中両国の歩み寄りが不透明な中、私たちは素材メーカーの収益悪化や、それに伴うデフレ圧力の再燃に備えるべきでしょう。今は楽観を排し、アジア市場の動向を注視しながら、守りの経営や家計管理が求められる局面だと言えそうです。
コメント