日本銀行が異次元緩和の象徴として買い支えてきたETF(上場投資信託)に、新たな動きが見え始めました。2019年10月30日、日銀は保有する膨大なETFを証券会社へ一時的に貸し出す新制度を、2020年春にも開始する方針を明らかにしています。市場の約8割を日銀が独占している現状において、この決定は「待望の制度」として大きな注目を集めています。SNS上でも「市場の歪みが解消される一歩になるか」と期待の声が上がる一方で、運用の詳細については厳しい視線も注がれています。
そもそもETFとは、日経平均株価などの指数に連動するように運用される投資信託で、株式のようにリアルタイムで売買できるのが特徴です。しかし、日銀が市場の大部分を保有し続けているため、民間の投資家が買いたい時に十分な売り物がないという「品薄状態」が深刻化していました。今回の制度は、日銀が保有する在庫を証券会社に貸し出すことで、市場に出回る商品の数を増やし、取引をスムーズにする「流動性の向上」を最大の目的として掲げています。
マーケットの「値付け役」を支える仕組みと期待
投資家がいつでも安定した価格で売買できるのは、証券会社などの「マーケットメイカー(値付け業者)」が常に売り買いの注文を出しているからです。しかし、これまでは現物株の調達に時間がかかるため、業者が十分な在庫を抱えられないというジレンマがありました。新制度が稼働すれば、業者は必要な時に日銀からETFを借りて投資家へ提供できるようになります。これにより、大規模な買い注文にも即座に対応が可能となり、米国のような活発な市場環境へ近づくことが期待されるでしょう。
日銀側にとっても、この制度には明確なメリットが存在します。貸出料を得ることで、ETFの管理にかかるコスト(信託報酬など)を相殺できるためです。黒田東彦総裁は、市場機能への配慮を強調しており、市場が活性化すれば日銀自身もさらなる買い入れが行いやすくなるという好循環を見込んでいます。専門家の間では、借りたETFを日銀に再び売却する「空売り」のような高度な取引手法も想定されており、運用の幅が大きく広がることは間違いありません。
「月1回の入札」が壁?現場から上がる切実な懸念
ただ、現在の案には現場から「使い勝手が悪い」との懸念も噴出しています。日銀が提示した案では、貸し付けの入札頻度が「月に1回」となっており、証券会社は1ヶ月先の需要を予測して借りなければなりません。もし予測が外れて売れ残れば、無駄な貸出料が発生してしまいます。SNSでは「せっかくの制度も頻度が少なすぎては意味がない」といった批判も見られ、機動的な決済を求める市場関係者の声と、日銀の想定に温度差があるのが実情です。
日銀幹部も、証券業界の細かな行動原理について理解が及んでいない部分があることを認めており、今後2020年のスタートに向けて制度設計の微調整が続くでしょう。個人的な見解としては、中央銀行が市場の大部分を支配する特異な状況を是正する手段として、この貸付制度は非常に理にかなった一手だと考えます。しかし、形式的な制度に留まらず、民間が真に使いやすい「生きた制度」に昇華できるかどうかが、日本の金融市場の成熟度を占う試金石となるはずです。
コメント