中東の民主主義の要とも言われるイスラエルで、歴史的な政治の転換点が訪れています。リブリン大統領は2019年10月23日、9月に実施されたやり直し総選挙で見事第1党の座を射止めた中道野党連合「青と白」を率いるベニー・ガンツ元軍参謀総長に対し、次期政権の発足を担う「組閣」を正式に要請しました。これは長年政権を維持してきた右派リクードのネタニヤフ首相が、10月21日に連立工作の行き詰まりから組閣を断念したことを受けた、極めて重要な局面といえるでしょう。
「組閣」とは、選挙結果に基づき国会の過半数の支持を取り付けて内閣を組織することを指しますが、現在のイスラエルにおいてその道のりは平坦ではありません。ガンツ氏は2019年10月23日の受諾に際し、「リベラルな統一政権の構築を目指す」と力強く宣言しました。これは特定の宗教観や過激な思想に偏らず、幅広い国民の権利を尊重する政治姿勢を打ち出したものです。しかし、定数120の国会で過半数を確保するには、主義主張の異なる他党との緻密な交渉が不可欠となります。
SNS上では、長らく続いたネタニヤフ政権の交代を期待する声が上がる一方で、「果たしてバラバラな野党が一つになれるのか」という不安も渦巻いています。実際に、ガンツ氏を支持する勢力は、イスラエルの政権運営に加わらない慣例のあるアラブ系政党を除外すると、わずか44議席にしか達しません。過半数にはあと17議席も足りない計算となり、キャスティングボートを握る勢力との熾烈な駆け引きが予想されます。内政の混乱は、しばらくの間収束の気配を見せないかもしれません。
個人的な見解を述べさせていただくと、今回の政局は単なる権力争いではなく、イスラエルが「多様性」と「伝統」のどちらを優先するかの瀬戸際に立たされていると感じます。軍のトップを歴任したガンツ氏の安定感は魅力ですが、連立のために過度な譲歩を強いられれば、公約であるリベラルな政策が骨抜きになるリスクも孕んでいるでしょう。分断が進む国民をどのようにまとめ上げるのか、彼のリーダーシップが真に試されるのは、まさにこの組閣交渉の1分1秒にあると言っても過言ではありません。
コメント