2020年東京五輪の暑さ対策として、マラソンと競歩の開催地を東京都から札幌市へ移転する国際オリンピック委員会(IOC)の電撃発表は、日本中に大きな衝撃を与えました。現在、大会組織委員会は札幌市中心部に位置する「大通公園」を発着点とする方向で具体的な検討を進めています。もともとIOCは「札幌ドーム」を活用するプランを提案していましたが、現地の状況を精査した結果、実現には高いハードルがあることが判明したのです。
なぜ、当初の札幌ドーム案は見送られることになったのでしょうか。大きな要因は、競技を行うために不可欠な改修費用と工期の問題です。ドームをマラソン会場として機能させるには、走者用の専用出入り口やトラックを新設する大規模な工事が必要となり、その予算は数十億円規模に膨れ上がる見通しとなりました。さらに、プロ野球の試合日程への影響も避けられず、現実的な選択肢ではないとの判断が下されたようです。
伝統の北海道マラソンをベースに描く新コースの全容
新たな舞台として浮上した大通公園は、例年夏に開催されている「北海道マラソン」の拠点でもあります。大会関係者によれば、この実績あるルートをベースに五輪コースを構築する案が極めて有力視されています。過去の大会運営を通じて警備や設営のノウハウが蓄積されていることは、準備期間が限られた中で大きなアドバンテージとなるでしょう。また、競歩についても、起伏の激しいドーム周辺より平坦な大通周辺が適していると見られています。
しかし、大通公園での開催には課題も残されています。公園内のスペースには限りがあるため、多くの観客を収容する仮設スタンドの設置が難しいというデメリットが指摘されています。世界中から注目が集まるオリンピックにおいて、現地で観戦できる人数が制限される点は、ファンにとっても組織委員会にとっても悩ましい問題です。ネット上では「大通なら景色は綺麗だけど、混雑が凄そう」といった不安と期待が入り混じった声が上がっています。
深まる対立と開催都市としてのプライド
こうした事務的な調整が進む一方で、開催地の変更を巡る政治的な火種は依然としてくすぶっています。東京都の小池百合子知事は「東京で開催すべきという考えは変わらない」と、IOCの方針に対して明確な拒絶反応を示しています。開催都市としてのプライドと、これまで準備に投じてきた膨大なエネルギーを考えれば、都の強い反発は当然の帰結とも言えるでしょう。
個人的な見解としては、選手の安全を守る「暑さ対策」が最優先であることは理解できますが、あまりにも急な決定プロセスには疑問を禁じ得ません。2019年10月30日から始まる3日間の調整会議が、組織委員会、東京都、IOCの三者にとって納得のいく着地点を見出せるのか、その動向から目が離せません。スポーツの祭典が、政治的な対立ではなく、アスリートが最高の結果を残せる最高の舞台となることを切に願います。
コメント