2019年11月09日、フィギュアスケートのグランプリシリーズ第4戦・中国杯において、女子シングルの宮原知子選手が合計211.19点をマークし、見事2位に輝きました。近年の女子フィギュア界では、トリプルアクセルや4回転ジャンプといった大技が勝敗を分ける「超高難度時代」が到来しています。しかし、彼女が氷上で示したのは、決して派手さだけではない、スケートの本質的な美しさと圧倒的な完成度でした。
フリープログラムで彼女が選んだのは、映画『シンドラーのリスト』の楽曲です。この作品は、第二次世界大戦中のユダヤ人虐殺、いわゆるホロコーストという重い歴史を背景にしています。宮原選手はこの壮絶な物語を通じて、絶望の淵に立たされても決して希望を捨てない、人間の内なる強さを表現したいと語りました。彼女の指先まで神経が行き届いた所作には、観客の心を揺さぶる深い慈愛が宿っているように感じられます。
技術面でも、彼女の代名詞ともいえる「安定感」は健在でした。冒頭から全てのジャンプを着氷させただけでなく、スピンやステップにおいても最高評価の「レベル4」を揃えています。レベル4とは、要素の技術的な難易度が最も高いことを示す指標です。基礎を徹底的に磨き上げてきた彼女だからこそ到達できる、まさに職人芸とも呼べる境地でしょう。SNSでも「知子ちゃんの滑りはもはや芸術品」「心に響く」と感嘆の声が相次ぎました。
ダンスで磨いた新境地!演技構成点で全体1位の快挙
今回の躍進の裏には、オフシーズンに取り組んできた飽くなき探究心があります。宮原選手は表現の幅を広げるため、バレエやコンテンポラリーなど、あらゆるジャンルのダンスを学び、自身の滑りに落とし込んできました。その成果は数字にも如実に表れています。審判が芸術性や構成を評価する「演技構成点」において、5項目のうち4項目で9点台という高得点を叩き出し、ショートに続いて全体1位の評価を獲得したのです。
もちろん、4回転ルッツという大技を武器にするロシアのアンナ・シェルバコワ選手には及びませんでしたが、宮原選手の表情に悲観の色はありません。むしろ、自身の得意とする「滑りの質」をさらに伸ばし、強豪たちに食らいついていくという強い決意を口にしています。ジャンプの回転数という「数」の勝負ではなく、一つひとつの動きの「質」で勝負する彼女の姿勢は、フィギュアスケートが持つスポーツと芸術の融合を改めて我々に思い出させてくれます。
編集者の視点から言えば、今の宮原選手には「孤高の美学」すら感じます。流行に流されず、自分自身の信じる道を究める姿は、多くのファンの胸を打つに違いありません。次戦のロシア杯では、3種類の4回転ジャンプを操るアレクサンドラ・トルソワ選手との対決が控えています。過酷な戦いが予想されますが、宮原選手ならどんな状況でも、自分らしい光を氷の上で放ち続けてくれるはずです。
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