「ラッパのマーク」という響きから、多くの方が伝統的な胃腸薬である正露丸を思い浮かべることでしょう。しかし現在、大幸薬品の成長を力強く牽引しているのは、空間除菌消臭剤の「クレベリン」なのです。2019年11月26日時点の発表によると、同社の2019年4〜9月期における連結売上高は前年比15%増の43億円を記録し、営業利益も9億8000万円と非常に堅調な数字を叩き出しています。
特筆すべきは、2020年3月期の通期売上高が112億円に達し、2年連続で過去最高を更新する見通しとなっている点です。その収益の約5割を支えているのが、正露丸に次ぐ柱として育ったクレベリンです。SNS上でも「受験シーズンには欠かせない」「デザインがスタイリッシュになった」といった好意的な意見が目立っており、そのマーケティング戦略の鮮やかさが、数字の面でも裏付けられた形と言えるでしょう。
「宇宙戦艦ヤマト」の志で集う異能のプロ集団
この躍進の裏側には、柴田高社長による独自の経営体制が存在します。驚くべきことに、同社の執行役員7人は全員が大手企業出身の「プロ役員」で構成されています。柴田社長がスカウトの際に放つ「宇宙戦艦ヤマトを知っているか」という言葉は、もはや伝説的です。放射能汚染から地球を救う物語に、ウイルスから人々を守るクレベリンの使命を重ね合わせる熱いプレゼンが、数々の敏腕マネジメント層を惹きつけて止みません。
外科医としての背景を持つ柴田社長は、かつて主力商品である正露丸の科学的データ不足からくる危機を乗り越えた経験から、外部の視点を取り入れる重要性を熟知しています。独自の視点を持つ人材が結集することで、同社は古い殻を脱ぎ捨てようとしています。ここで語られる「二酸化塩素」とは、強い酸化力を持ち、ウイルスや菌の機能を低下させる物質のことです。この科学的根拠を武器に、同社は市場での信頼を確実に積み上げてきました。
ターゲットを絞った戦略と「ブルーオーシャン」への挑戦
マーケティングを統括する長田賢俊執行役員は、花王などで培った手腕を活かし、ブランドイメージを一新させました。あえて象徴であるラッパのマークを外した新パッケージを導入し、ターゲットを「絶対に病気になれない妊婦や受験生」に凝縮したのです。この大胆な施策により、販売2割増という高い目標をわずか1年で達成しました。当初は社内からの反発もあったそうですが、市場調査に基づいた戦略は着実に結果へと結びつきました。
さらに、元GE日本法人の関真一執行役員は、法人向けの「ブルーオーシャン」を開拓しています。ブルーオーシャンとは、競合相手がいない未開拓の市場を指すビジネス用語です。例えば、自動車販売店向けに15分で車内を除菌できる機器を提案するなど、家庭用以外の販路を拡大させています。現在、正社員の約6割が中途採用者であり、新卒採用を休止してまでスピード感を重視するその姿勢は、伝統企業とは思えないほど柔軟でアグレッシブです。
個人的な見解を述べさせていただくなら、創業100年を超える老舗が、これほどまでに外部の「血」を歓迎し、自己変革を遂げる姿には驚きを隠せません。プロ経営者たちが生み出す化学反応は、今後も私たちの健康を守る新たな常識を作っていくでしょう。ただの実績重視ではなく、人々の命を救いたいという青臭いほどの情熱が根底にあるからこそ、これほどまでに優秀な人材が集まるのかもしれませんね。
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