次世代ディスプレイの父が語る自由な研究の価値!有機EL素子を生んだ「京都賞」チン・W・タン博士の先見性とは

2019年11月18日、科学や思想の発展に大きく寄与した人物を讃える「京都賞」の授賞式に関連して、有機EL素子の生みの親として知られるチン・W・タン博士が貴重なインタビューに応じました。香港科技大学の教授であり、米ロチェスター大学の名誉教授も務める博士は、現代のデジタルライフに欠かせない技術の基礎を築いた人物です。

博士がかつて米イーストマン・コダックの研究員として成し遂げた偉業は、実は最初から意図されたものではありませんでした。当初は太陽光を電気に変える「有機太陽電池」の開発に心血を注いでいたものの、期待通りの成果は得られなかったといいます。しかし、その過程で試行錯誤を繰り返して編み出した独自の構造が、後の有機EL素子という大発明へと繋がったのです。

企業の研究者としてなぜこれほど画期的な成果を出せたのかという問いに対し、博士は「自由な研究環境」の重要性を真っ先に挙げました。大学の研究職とは異なり、絶え間なく論文の執筆に追われることがなかった点が大きなアドバンテージだったようです。目先のノルマに縛られず、純粋に技術の可能性を追求できる場所こそが、イノベーションの揺りかごとなったのでしょう。

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腰を据えた研究が未来を創る

チン・W・タン博士は、10年単位のスパンで結果を出せばよいという当時のコダック社の寛容な社風が、深い洞察をもたらしたと振り返ります。腰を据えて研究に没頭できた当時の環境を懐かしむ一方で、効率や短期的な成果を過剰に求める現代の大学や企業の在り方には、静かな危機感を抱いている様子が伺えました。

SNS上でもこの発言は大きな話題を呼んでおり、「失敗を許容する文化こそが次の時代を創る」「今の日本企業に最も足りないのはこの余裕ではないか」といった共感の声が相次いでいます。効率重視の世の中で、あえて遠回りを受け入れる姿勢が、結果として世界を変える技術を生み出すというパラドックスは、多くの現代人にとって深く考えさせられるトピックです。

ここで「有機EL」について簡単に解説しておきましょう。これは、特定の有機化合物に電圧をかけると自ら光を放つ現象を利用したディスプレイ技術です。バックライトが必要な液晶とは違い、素子そのものが発光するため、圧倒的な薄さと鮮やかなコントラストを実現できるのが最大の特徴となっています。

博士は今後のディスプレイ市場について、スマートフォンなどの携帯端末では、薄型化や折り曲げが可能な有機ELが液晶を完全に駆逐すると予測しています。一方で、大型テレビ市場では、超小型のLEDを敷き詰める「マイクロLED」技術と、サイズや用途に応じて共存していくという極めて現実的で鋭い見通しを示しました。

私自身の考えを述べさせていただけるなら、博士の言葉は技術開発の現場だけでなく、あらゆるクリエイティブな活動に通じる真理だと感じます。イノベーションとは計算されたスケジュールからではなく、予期せぬ失敗を宝に変えられる「心の余白」から生まれるものです。私たちは今一度、効率の裏側に隠れた「遊び」の価値を見直すべき時期に来ているのではないでしょうか。

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