山中教授が憤る「iPS細胞ストック事業」支援打ち切りの波紋。再生医療の未来を左右する予算削減の是非とは

日本が誇る科学技術の至宝、iPS細胞を用いた再生医療がいま、大きな岐路に立たされています。2019年11月18日現在、政府が再生医療の要となる「iPS細胞ストック事業」への公的支援を大幅に減額、あるいは打ち切る可能性が浮上し、医療界に激震が走っているのです。

この事業は、拒絶反応が起きにくい特殊な型を持つ高品質なiPS細胞を、あらかじめ備蓄(ストック)しておくという国家的なプロジェクトです。これにより、患者自身の細胞から作るよりも、はるかに迅速かつ安価に治療を提供できる未来を目指してきました。

スポンサーリンク

山中伸弥教授の憤りと、突きつけられた厳しい現実

2019年11月11日、日本記者クラブで会見した京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥所長は、政府の唐突な方針転換に対し、「あまりに理不尽だ」と強い憤りをあらわにしました。2022年度まで約束されていたはずの支援が、突然ゼロになるという話はまさに寝耳に水だったようです。

SNS上でもこのニュースは瞬く間に拡散され、「世界に誇る日本の技術を国が捨ててどうするのか」「山中先生の努力に甘えすぎではないか」といった、政府の姿勢を疑問視する声が数多く寄せられています。国民の関心は、単なる予算問題を超えた次元にまで高まっています。

政府側が強気な姿勢を見せる背景には、山中教授が自らマラソンなどで呼びかけ、集めてきた約143億円もの寄付金の存在があるようです。これに対し山中教授は、個人の善意による寄付があるからといって国の予算を削るのは本末転倒であると、行政のあり方に警鐘を鳴らしました。

「公益財団法人への移行」が招いた逆風の正体

今回の混乱のきっかけは、事業の運営母体が京都大学から新たに設立される「公益財団法人」へ2020年度から移管されることにあります。ここでいう公益財団法人とは、不特定多数の利益のために活動する非営利団体のことで、税制上の優遇措置を受ける代わりに、高い透明性が求められます。

政府はこの移行を機に、事業を民間の自立した組織として独り立ちさせようと画策しているのでしょう。しかし、まだ実用化への途上にある先端医療において、急激な「自立」の強制は、積み上げてきた研究体制を根底から崩しかねない危うさを孕んでいます。

自民党内からも「作り上げたものが壊れないよう支えるべきだ」との慎重論が出ており、段階的な減額案も検討されています。しかし、予算編成の期限である2019年12月は目前に迫っており、山中教授らに残された交渉の時間は極めて限られているのが現状です。

編集者が見る、科学技術立国・日本の危うい選択

確かに一部からは、備蓄された細胞の利用実績がまだ少ないといった厳しい指摘があるのも事実です。しかし、未知の領域を切り拓く科学研究において、目先の効率性や短期間の結果だけを追い求める姿勢は、日本の将来的な競争力を削ぐことにならないでしょうか。

私が考えるに、科学者が自ら頭を下げて寄付を募らなければならない現状自体、日本の研究環境の厳しさを象徴しています。国の「はしご外し」とも取れる今回の動きは、今後志ある若手研究者たちが日本を離れる「頭脳流出」を加速させてしまうのではないかと危惧しています。

2019年というこの年は、日本が「再生医療のリーダー」として走り続けるのか、それとも失速するのかを決める運命の年になるでしょう。政府には、山中教授が求める「公開の場での透明性ある議論」を尽くし、国民が納得できる結論を出す責任があります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました