2019年11月18日、希少難病である遺伝性血管性浮腫、通称「HAE」の啓発活動を支える山本ベバリー・アン理事長は、これまでの歩みと未来への課題を静かに語りました。2013年の患者会発足から約7年。正しい診断を受けて治療を開始した患者数は当時の2倍にまで増加したものの、その陰には依然として未診断のまま苦しむ多くの人々が残されています。
HAEとは、体内の特定のタンパク質の働きが弱まることで、前触れもなく皮膚や粘膜に激しい腫れが生じる病気です。この症状は単なる「むくみ」とは異なり、喉の粘膜が腫れると窒息のリスクを伴う恐れがあります。日本では約5万人に1人の割合で発症すると言われていますが、その認知度の低さゆえに、適切な診断にたどり着くまでの道のりは決して平坦ではありません。
失われなくていい命を守る。未診断患者2000人の壁
山本氏が最も心を痛めているのは、正しい診断が遅れたことで大切な家族を失った遺族たちの声です。喉の発作による呼吸困難で命を落とした事例を耳にするたび、周囲の医師がHAEという病気を知っていれば救えたはずだと、やりきれない感情が溢れ出します。国内には現在もなお、約2000人の未診断患者が潜在していると推定されているのです。
SNS上では、何年も原因不明の腹痛や腫れに悩まされてきた方々から「この病名を知って救われた」「お医者さんにもっと知ってほしい」といった切実な声が上がっています。こうした状況を打破するため、山本氏は大学病院での講義を通じて若い世代の医師への教育を徹底し、疾患の認知度向上に全力を注いでいらっしゃいます。
私は、この「知識の不足」が命を左右する現状は、一刻も早く改善されるべきだと考えます。稀な病気だからこそ、一人の医師が一生のうちに出会う確率は低いかもしれません。しかし、その一回の出会いを見逃さない体制を整えることこそが、医療における「セイフティネット」としての役割を果たすのではないでしょうか。
ファミリーテストという誠実な選択と、未来へのデータ収集
HAEは遺伝的な要因が大きいため、血縁者の中に同じ悩みを抱える方がいる可能性が高いのも特徴です。しかし、日本では「結婚への影響」を懸念して、血縁者の検査である「ファミリーテスト」を避ける傾向にあります。これに対し山本氏は、結婚において大切なのは互いの誠実さであり、早期に知ることで万全な備えができるのだと、力強く背中を押しています。
さらに、治療の最前線では「RUDY JAPAN(ルーディジャパン)」という画期的なプロジェクトが動き出しました。これは、患者自身がウェブ上で症状を記録し、そのデータを研究者が分析して治療法の開発に繋げるという、患者参加型の研究手法です。データの集まりにくい希少疾患にとって、患者の日常的な記録こそが次世代の光となるでしょう。
情報の少ない希少疾患だからこそ、海外の最新論文の翻訳作業も急ピッチで進められています。山本氏の願いは、患者やその家族が本来の自分らしく、笑顔で毎日を過ごせる社会の実現にあります。この記事が一人でも多くの方の目に留まり、HAEへの理解が深まるきっかけとなることを願ってやみません。
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