日本の医療機器大手であるテルモが、大動脈瘤治療に革命をもたらす一手を投じました。同社は2019年11月26日、血管内の治療器具を精密に設計するソフトウェア技術を持つアメリカのベンチャー企業、アオルティカ社の買収を公表したのです。買収額は数億円規模にのぼると見られており、2019年内にはすべての買収手続きが完了する見通しとなっています。
今回の買収の目玉は、腹部の大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)治療で用いられる「ステントグラフト」の自動設計技術にあります。大動脈瘤とは、心臓から全身に血液を送る太い血管がコブのように膨らんでしまう病気です。もしこれが破裂すれば命に関わるため、迅速かつ正確な処置が求められます。これまで困難とされてきた症例に対し、今回の技術がどのような希望の光を灯すのか、大きな注目が集まっています。
カテーテル治療の限界を超える!「穴」の位置を自動判定する神業ソフト
ステントグラフトとは、人工血管に網目状の金属を組み合わせた医療器具のことです。これをカテーテルという細い管に通して足の付け根から挿入し、患部で広げることで瘤への血流を遮断し破裂を防ぎます。しかし、血管には枝分かれする重要な動脈がいくつもあり、これらを塞がずに、かつ瘤だけを覆うようにステントに正確な「穴」を開ける作業は、これまで非常に高度な技術と時間を要する課題でした。
ここで活躍するのが、アオルティカ社が開発した画期的なソフトウェアです。このソフトは、患者さんを撮影したCT画像(コンピューター断層撮影)のデータを詳細に解析します。そして、血管の分岐位置を瞬時に割り出し、その人にとって最適な「穴の位置」を自動で判定してくれるのです。まさに、一人ひとりの血管の形に合わせた「オーダーメイド」の治療器具を、デジタル技術で設計できるようになったと言えるでしょう。
SNS上では「医療のDX化がここまで進んでいるのか」「難しい手術が減って患者の負担が軽くなるのは素晴らしい」といった驚きと期待の声が広がっています。従来であれば、複雑な血管構造を持つ患者さんはお腹を大きく切り開く「開腹手術」を選択せざるを得ませんでした。しかし、この自動設計技術が普及すれば、体への負担が格段に少ないカテーテル治療の適応範囲が劇的に広がることが期待されます。
2020年代のグローバル展開へ!テルモが描く個別化医療の未来図
私は、今回の買収は単なる企業の規模拡大ではなく、医療が「標準化」から「個別化」へとシフトする象徴的な出来事だと確信しています。これまでの医療機器は、ある程度のサイズ展開から選ぶのが一般的でした。しかし、デジタル技術を融合させることで、患者さんの解剖学的な特徴に100%合致する治療を提供できる時代が、すぐそこまで来ているのです。
テルモは今後、このソフトウェアで設計されたステントグラフトの臨床試験(治験)を加速させる方針です。2020年代には、日本国内のみならず欧米市場での発売も視野に入れており、年間で数十億円規模の売り上げを目指しています。命を救う最前線に最新のIT技術が組み込まれることで、外科医の負担軽減と、患者さんの早期社会復帰という両側面でのメリットが最大化されるはずです。
世界中の医療現場で、日本発のグローバル企業がデジタル・ヘルスケアの旗手として存在感を示すことは、私たちにとっても誇らしいニュースですね。2019年12月末の買収完了を経て、来たる2020年代にどのような革新的な製品が登場するのか、その動向から目が離せません。精緻なモノづくりと高度なソフトウェアの融合が、血管内治療の常識を塗り替えていくことになるでしょう。
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