私たちの食卓や日用品に欠かせない「パーム油」の国際価格が、2019年11月09日現在、約1年ぶりとなる高値を付けています。アブラヤシから採れるこの植物油は、世界で最も消費量が多い油として知られていますが、足元の市場では産地と需要国の間で激しい火花が散っているようです。
価格上昇に沸く一方で、市場関係者が固唾を飲んで見守っているのが、主要な生産国であるマレーシアと、世界最大の消費国であるインドとの冷え切った関係でしょう。マレーシアにとって輸出先の約3割を占める大得意様のインドですが、両国の間には今、深刻な政治的亀裂が生じています。
事の発端は、インドがパキスタンと領有権を争うカシミール地方を巡る問題でした。マレーシアの首相がパキスタンを支持するかのような発言を行ったことで、インド側の怒りに火が付いたのです。この事態を受け、インド国内ではマレーシア産パーム油の輸入を停止するというショッキングな報道まで飛び出しました。
SNS上では「政治の喧嘩に生活必需品を巻き込まないでほしい」といった消費者の不安や、「外交問題がこれほどダイレクトに相場へ影響するとは」という驚きの声が広がっています。自由貿易の建前が通用しない、まさに国家のメンツをかけたパワーゲームが繰り広げられていると言えるでしょう。
環境規制と国際政治の荒波がもたらす不透明な先行き
さらに懸念されるのが、欧州連合(EU)による厳しい規制の動きです。EUは将来的にパーム油の輸入を禁止する方針を固めており、これは産地にとって大きな打撃となるに違いありません。欧米諸国では、農園開発に伴う森林破壊が環境破壊の象徴として、以前から根強い批判の対象となってきました。
ここで解説しておくと、パーム油とはアブラヤシの果実から得られる油で、安価で加工しやすいためお菓子や洗剤に幅広く使われます。しかし、その生産効率の高さゆえに熱帯雨林が伐採されるケースがあり、持続可能性を問う「SDGs」の観点からも厳しい目が向けられているのが現状なのです。
編集者の私見としては、今回の価格高騰は一時的な需給バランス以上に、政治的な「武器」としてパーム油が利用されている危うさを感じます。環境保護という正義と、国家間の外交カード。これらが複雑に絡み合う現状では、パーム油の国際相場が突然急落するリスクも十分に孕んでいると予測されます。
2019年11月09日の高値は、あくまで不安定な均衡の上に成り立っているに過ぎません。今後のマレーシアによる外交的歩み寄りや、EUの規制緩和が進むのか。産地と需要国のパワーバランスから、今後も目が離せない日々が続きそうです。
コメント