千葉県市原市を走る小湊鉄道の沿線には、春になると目も眩むような美しい菜の花が広がります。この風光明媚な景色を次世代へと繋ぐために奔走しているのが、市原市の「地域おこし協力隊」第1号として活躍する高橋洋介さんです。
高橋さんは現在30歳、地元・市原で生まれ育った生粋の市民です。大学進学で都内へ出た後、全国各地を旅して回る中で、改めて故郷の持つ深い魅力に気づかされました。地元に貢献したいという強い想いが、彼をこの道へと突き動かしたのです。
「地域おこし協力隊」とは、都市部から地方へ移住し、その土地の活性化を支援する総務省の制度です。2017年04月01日、市原市でこの制度が新設されると同時に、高橋さんは応募を決意。現在はグラフィックデザイナーとして働きつつ、農業にも情熱を注いでいます。
SNSでは「小湊鉄道と菜の花の写真は本当に映える」「ずっと残してほしい風景」といった声が多く聞かれます。しかし、この絶景を維持するのは容易ではありません。かつては休耕田だった場所を、地域の方々が10年ほど前から地道に耕し続けてきた賜物なのです。
災害を乗り越え、黄金色の未来を創る
素晴らしい景色を守るための最大の壁は、農業従事者の高齢化です。維持管理をボランティアだけに頼るのは限界が来ると考えた高橋さんは、持続可能な仕組み作りを模索しました。その第一歩が、菜の花から「菜種油」を製造・販売するプロジェクトです。
2019年03月にはクラウドファンディングを活用し、観光客への周知も積極的に行いました。景色を楽しむだけでなく、商品を購入することで保全活動を支援できるこの仕組みは、今の時代に合ったスマートな地域活性化の形と言えるでしょう。
ところが2019年09月09日、大規模な台風15号が市原市を襲いました。倒木や停電など甚大な被害が出ましたが、停電復旧からわずか2日後の2019年09月21日、復興の願いを込めた種まきには約60人もの有志が集結したのです。
2019年10月には豪雨による養老川の氾濫もありましたが、菜の花の芽は力強く育っています。協力隊の任期は残り半年ほどですが、高橋さんは「もう離れられない」と語ります。彼の覚悟が、地域の絆をより強固なものにしているのは間違いありません。
一人の若者の挑戦が、伝統的な風景に「産業」という新たな息吹を吹き込みました。単なるボランティアに留まらない、ビジネス視点を持った地域おこしの在り方は、全国の地方自治体にとって希望の光となるはずです。春に咲く花が、今から楽しみでなりません。
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