特殊詐欺の被害に遭った70代の女性が、指定暴力団・稲川会の辛炳圭(通称・清田次郎)元会長を相手取り、約2150万円の損害賠償を求めていた訴訟の判決が2019年11月11日に東京地裁で言い渡されました。小川理津子裁判長は、原告側の請求を棄却するという、被害者にとっては非常に厳しい判断を下しています。
今回の裁判で焦点となったのは、暴力団の組員が起こした犯罪に対して、そのトップがどこまで責任を負うべきかという点でした。裁判長は、今回の詐欺行為が「稲川会の威力を背景とした資金獲得活動」とは認められないと指摘しています。犯行に用いられた携帯電話の調達過程や、詐取された金銭が組織の利益になったという証拠が不十分であると判断された形です。
ここで「使用者責任(しようしゃせきにん)」という専門用語を解説しましょう。これは、ある事業のために他人を雇っている者が、その被用者が業務中に他人に与えた損害を賠償しなければならないという民法上のルールです。暴力団対策法(暴対法)でも、組員が組織の力を背景に他人の財産を侵害した場合、トップも連帯して責任を負うことが規定されていますが、今回はその適用が否定されました。
原告弁護団によれば、特殊詐欺事件において暴力団トップの使用者責任を認めなかった判決は、全国で2例目となります。過去には賠償を命じたケースも2件存在しており、司法の判断は現在、真っ二つに割れている状況です。証拠の積み上げがいかに困難か、そして組織の実態を法廷で証明することの難しさが浮き彫りになったと言えるでしょう。
SNS上ではこの判決に対し、「被害者が救われないのはおかしい」「暴力団の威力を利用していない詐欺なんてあるのか」といった疑問の声が噴出しています。一方で、証拠裁判主義の観点から「司法としては妥当な判断」と冷静に受け止める意見も見られ、社会全体の関心の高さが伺えます。
メディア編集者としての私の意見を述べさせていただきますと、今回の判決は特殊詐欺の巧妙化に対する法の限界を露呈したように感じます。末端の組員が組織名を隠して犯行に及べばトップの責任が問えないとなれば、被害者救済の道はさらに険しくなるはずです。2019年11月11日に示されたこの司法判断が、今後の法改正や捜査の在り方にどのような影響を与えるのか、注視していく必要があるでしょう。
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