2019年11月08日、猛威を振るった台風19号の爪痕が、宮城県丸森町の誇るべき美しい景観にも深く刻まれています。「日本の棚田百選」にも選出された名所「大張沢尻棚田」が、近隣の山崩れによって大量の土砂や倒木に飲み込まれるという悲劇に見舞われました。四季折々に多くの観光客を魅了してきた黄金色の稲穂の風景が、いま茶色の泥に覆われ、変わり果てた姿をさらしています。
大小27枚の田んぼが斜面に連なるこの棚田は、江戸時代から昭和にかけて気の遠くなるような歳月をかけて開墾された、まさに地域の宝です。1999年には農林水産省からその美しさを認められましたが、現在は過疎化と高齢化の波にさらされています。2012年に地元の保全委員会が解散した後、「伝統を絶やしたくない」という一念で大槻光一さん(71)ら3人の有志がその管理を引き継いできました。
ここで「日本の棚田百選」について解説を加えましょう。これは農林水産省が認定した、優れた景観や保全活動が行われている棚田のリストです。棚田は単に美しいだけでなく、急傾斜地での多面的な機能――例えば洪水を防ぐダムのような役割や、多様な生態系を守る役割――を担っています。しかし、機械化が困難なため維持には多大な労力が必要であり、一度崩れると復旧には専門的な技術と莫大な費用がかかるのが現実です。
SNS上では、変わり果てた棚田の姿に「ボランティアで土砂を運び出せないか」「この風景を失うのは日本の損失だ」といった悲痛な声や、支援を模索する投稿が相次いでいます。特に、行政の補助が出るか不透明な中で「自分たちの手で工事を行う」という大槻さんたちの決意に対し、「その覚悟に涙が出る」「何らかの形で寄付をしたい」という、全国からの温かいエールが広がりを見せています。
編集者としての意見を述べさせていただきます。文化財的な価値を持つ景観が、個人のボランティア精神のみに依存して守られている現状には危うさを感じざるを得ません。大槻さんが語る「ここで諦めたら引き継ぐ人がいなくなる」という言葉は、日本の地方が抱える限界の叫びです。行政には一刻も早い復旧支援を検討していただき、この歴史的な風景を次世代へと繋ぐ強固な仕組みづくりを急いでほしいと切に願います。
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