自動車に不可欠な電子部品を手がけるASTI株式会社が、2019年11月11日に最新の業績を明らかにしました。対象となるのは2019年4月1日から2019年9月30日までの連結決算です。本業の儲けを示す営業利益は前年同期比で18パーセント減少となる、5億9800万円に落ち込みました。また、全体の売上高についても、2パーセント減少の226億円という結果に着地しています。
この数字だけを見ると少し不安に感じるかもしれませんが、最終的な手元に残る純利益に目を向けると、17パーセント増の6億3200万円と見事に増益を達成しているのです。本業で苦戦を強いられながらも、なぜ最終的な利益を増やすことができたのでしょうか。そこには、事業を展開する地域ごとの明暗と、会計上の特別な要因が深く関わっていると言えるでしょう。
インド市場の減速と、東南アジアでの躍進
今回の営業減益の大きな要因となったのは、インドにおける自動車市場の落ち込みです。同社が製造する「車載電装品」の販売が大きく伸び悩みました。車載電装品とは、カーナビゲーションや各種センサーなど、現代の自動車を制御するために欠かせない電子機器の総称を指します。巨大な市場であるインドでの販売不振が、会社の業績に重くのしかかった形になります。
しかし、決して悪いニュースばかりではありません。東南アジア地域に目を向けると、二輪車向けの「ワイヤハーネス」の販売が非常に好調に推移しています。ワイヤハーネスとは、車体中に電力や信号を張り巡らせるための「組み電線」のことで、人間で例えるなら神経や血管にあたる重要な部品です。成長著しい東南アジアの二輪車需要をしっかりと捉えている点は、非常にポジティブな要素だと感じます。
本業の苦戦をカバーした「特別利益」の存在
本業の儲けが減っているのに、なぜ最終的な純利益は増えたのか疑問に思う方も多いかもしれません。その秘密は「退職給付制度の改定益」にあります。これは、会社が将来従業員に支払う退職金などの制度を見直した結果、これまで準備していた資金に余裕が生まれ、それが会計上の利益として計上される仕組みです。こうした一時的に発生する利益のことを「特別利益」と呼びます。
つまり、今回はこの特別利益が本業のマイナス分を上手く補い、全体の数字を押し上げたという構図です。一時的な要因とはいえ、最終的な利益をしっかりと確保し、企業としての体力を維持できている点は評価すべきポイントではないでしょうか。投資家にとっても、最悪の事態を免れたという安心感につながる要素だと言えます。
市場の反応と、筆者が考える今後の成長シナリオ
今回の発表を受けて、SNS上でもさまざまな声が飛び交っています。投資家からは「インド市場の冷え込みは、他の自動車部品メーカーにも波及しそうで警戒が必要だ」といった慎重な意見が見られました。その一方で、「ワイヤハーネス事業が東南アジアで健闘しているのは心強い材料だ」「特別利益のおかげとはいえ、増益着地は素直に安心した」と安堵する声も多く上がっているようです。
私個人の見解としては、短期的なインド市場の低迷に過度な悲観をする必要はないと考えています。同国は圧倒的な人口増加と経済成長のポテンシャルを秘めており、中長期的には再び自動車需要が拡大するフェーズが訪れるはずです。ASTIには、現在の逆風を耐え抜きつつ、東南アジアでの成功モデルをさらに強固なものにしてほしいと願ってやみません。今後の柔軟な経営戦略に大いに期待したいところです。
コメント