毎日の通勤路や近所の公園など、見慣れた景色がパッと輝き出す魔法のようなアイテムが登場しました。東京都港区に拠点を置く広告制作会社「サン・アド」が展開する文具ブランド「ブンケン」は、人々の心を解きほぐすユニークなグッズを次々と提案しています。中でも今、大きな注目を集めているのが、街を歩きながら楽しむ移動式ゲーム「おさんぽBINGO」です。
このアイテムは、2019年11月13日現在、SNSやテレビなどのメディアでも大きな反響を呼んでいます。「子供と一緒に歩くのが楽しみになった」「普段いかに周りを見ていないか気づかされた」といった声が相次ぎ、累計販売数は約1万4000部に達するほどの人気ぶり。広告制作の第一線で活躍するクリエイターたちが、日々の暮らしの中で感じた「面白そう」という直感を見事に形にしています。
五感を刺激するアナログな仕掛けと遊び心
「おさんぽBINGO」のルールは至ってシンプルです。カードに描かれたポストやコンビニ、あるいは飛行機雲といった25種類のアイコンを探し、見つけたら穴を開けていくだけ。特筆すべきは、単なる記号の羅列ではなく、おばあさんを助ける「しんせつ」という行動や、運が良ければ遭遇できる「UFO?」といった、思わずクスッとしてしまう遊び心が散りばめられている点でしょう。
デジタル化が進む現代だからこそ、あえてこだわったのは「手触り」というアナログな質感です。穴を開ける際の心地よい抵抗感や、どこか懐かしさを感じる紙の風合い。これらは、ユーザーの五感を刺激して深い体験価値を生み出します。クリエイティブディレクターの笠原千昌さんは、自身の育児経験から「いつもの道をもっと楽しくしたい」という想いでこの商品を考案されました。
デザインについても、あえて写実的なイラストを採用しています。これは文字を読めない小さなお子様への配慮ですが、結果として日本語を解さない外国人観光客の方々にも親しまれることとなりました。2018年5月には、観光スポットを巡る東京版も発売されており、インバウンド需要の高まりにも見事に応えています。まさに、デザインが言語の壁を超えた好例と言えるでしょう。
「伝える」のその先へ。広告会社が挑む発明の形
「ブンケン」とは、2014年に社内で結成された「文具研究会」の略称です。コピーライターやアートディレクターなど、言葉とビジュアルのプロたちが集まり、既存の枠にとらわれないコミュニケーションの形を模索しています。彼らが作るのは、単なる文房具ではありません。言い出しにくい「お金返して」をカードで伝えるグッズや、削るたびに想いが深まる「ラブレター鉛筆」など、人と人の距離を縮める「発明品」なのです。
こうした実験的な試みは、本業である広告制作にもポジティブな影響を与えています。プロデューサーの徳永あかねさんによれば、自社ブランドでの実績が評価され、クライアントから商品開発の相談を受ける機会が増えたそうです。社内でも新しいアイデアを提案するスタッフが続出しており、クリエイティブな熱量が組織全体に波及している様子が伺えます。
このムーブメントは教育現場にも広がりを見せています。宮城県気仙沼市の小学校では、子供たちが自分たちの街の魅力を再発見する教材として、独自のBINGO作りが進行中です。2019年12月中旬には、地元の愛が詰まったオリジナル版が発売される予定となっています。広告の力で社会を明るくする「ブンケン」の挑戦は、これからも私たちの日常を彩り続けてくれるでしょう。
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