2019年8月末、フランス南西部のビアリッツで、世界のリーダーが集うG7サミットが開催されました。この国際的な舞台で、ファッション界の歴史を塗り替える大きな一歩が踏み出されたのをご存知でしょうか。フランスの高級品大手ケリングが中心となり、環境負荷の低減を目指す「ファッション協定」が発表されたのです。
この協定には、世界中の約150ものブランドが名を連ねており、業界全体の約30%を占める規模となっています。SNS上では「ついにハイブランドが本気を出した」「服を買う時の基準が変わりそう」といった、消費者からの期待に満ちた声が数多く寄せられています。おしゃれを楽しむことが、地球を守ることへと繋がる時代の幕開けと言えるでしょう。
協定設立のきっかけは、2019年4月にエマニュエル・マクロン大統領が、ケリングのフランソワ=アンリ・ピノーCEOへ直接依頼したことに遡ります。国家レベルでファッションの環境問題を解決しようとする動きは、非常に画期的です。もはや環境対策は一部の熱心な企業だけのものではなく、業界のスタンダードになろうとしています。
地球を守る3つの柱と、2050年を見据えた具体的なロードマップ
「ファッション協定」が掲げる目標は、決して抽象的なものではありません。彼らは「生物多様性の保全」「海洋環境の保護」「気候変動の抑制」という3つの主要な柱を軸に据えています。専門用語としてよく耳にする「生物多様性」とは、動植物から微生物まで、多様な生命が複雑に繋がり合って生態系を維持している状態を指します。
具体的なアクションとして、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現を目指しています。さらに、2030年までには使い捨てプラスチックの完全廃止や、使用エネルギーを100%再生可能エネルギーへ転換するという、非常に野心的な計画が盛り込まれているのが特徴です。
参加メンバーも豪華で、ケリング傘下のブランドはもちろん、シャネルやバーバリー、フェラガモといった老舗メゾンが賛同しています。加えて、アディダスやナイキといったスポーツ勢、さらにはZARAを展開するインディテックスやギャップなど、私たちの生活に身近な大手企業もこぞって署名を行いました。
独自路線を貫くLVMHと、ステラ・マッカートニー氏の電撃参戦
一方で、業界最大手のLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)はこの協定への不参加を表明しました。しかし、これは環境対策に消極的であることを意味しません。彼らは2019年5月にユネスコと保護協定を結び、さらに同年7月には、サステナブルファッションの先駆者であるステラ・マッカートニー氏とパートナーシップを締結しました。
LVMHは「イメージ向上のための宣伝」と思われることを嫌い、あえて静かに独自の取り組みを続けてきた経緯があります。しかし、ギャラリー・ラファイエットが展開したキャンペーンなどの影響もあり、ついにその沈黙を破りました。マッカートニー氏を特別アドバイザーに迎えたことは、彼らの本気の表れと捉えて間違いありません。
私は、この「協定派」と「独自路線派」の切磋琢磨こそが、業界をより良い方向へ導くと確信しています。ブランド同士が環境対策で競い合うことは、結果として消費者によりクリーンで高品質な選択肢を提供することに繋がります。日本市場においても、エシカルな消費への意識がこれを機に一層高まっていくことでしょう。
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