ビジネスパーソンの憧れとして君臨し続ける「ゼロハリバートン」が、今まさに新たな黄金期を迎えようとしています。東京・渋谷に拠点を置くバッグ大手のエースが展開するこの米国発祥ブランドは、これまで50代前後の男性から絶大な支持を集めてきました。しかし、2019年に入り、その客層に劇的な変化が起きているのです。
SNS上では「一生モノの相棒を手に入れた」という投稿が目立ち、その堅牢さとタイムレスな美しさに惹かれる若者が急増しています。2019年11月15日にリニューアルオープンを果たした丸の内店でも、その熱気は肌で感じられるほどでした。上司が愛用する姿に憧れを抱き、自身もその歴史を手に取ろうとする20代の姿が印象的です。
ゼロハリバートンの歴史は1938年にまで遡ります。最も有名なエピソードは、アポロ11号が月面着陸した際に「月の石」を地球へ持ち帰るケースとして選ばれたことでしょう。気密性と耐久性を極めたその性能は、まさに宇宙クオリティと言えます。ブランドの象徴であるアルミニウム製ケースは、今もなお圧倒的な人気を誇っています。
時代を超える「ダブルリブ」の輝きと若年層への浸透
デザインの核となるのは、ケース側面に施された「ダブルリブ」と呼ばれる2本の凹凸です。これは単なる飾りではなく、アルミニウムの強度を飛躍的に高めるためのプレス加工であり、機能美の極致と言えるでしょう。この武骨ながら洗練された佇まいが、今の若者が求める「本物志向」に見事に合致したのではないでしょうか。
近年の若年層は、安価なものを使い捨てるのではなく、多少高価でも長く愛せる逸品を重視する傾向にあります。トム・ネルソンCEOは、10年以上使い続けるファンが、また次も同じブランドを選ぶと語ります。傷やへこみが刻まれることで、持ち主と共に歩んだ歴史が刻まれる「エイジング」の魅力が、今の時代に再評価されているのです。
私は、この現象こそが真のブランディングの姿だと考えます。流行に左右されず、自らの強みを愚直に発信し続ける姿勢が、結果として世代を超えた共感を生んでいるからです。2019年11月現在、日本市場の売上比率を数年以内に4割近くまで引き上げるという野心的な目標も、この熱量があれば決して夢ではないはずです。
平均価格帯は約10万円と決して安くはありませんが、ポリカーボネートやナイロン素材を用いた軽量モデルなど、選択肢も広がっています。丸の内を訪れた青年が、下見のつもりで結局は新品を手に店を後にしたというエピソードは、このブランドが持つ抗いがたい魔力を象徴していると言えるでしょう。
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