日本の原風景とも言える里山から、かつて当たり前のように目にしていた生き物たちが静かに姿を消しています。日本自然保護協会が2019年11月17日までにまとめた最新の調査報告書によれば、2008年から2017年までの10年間で、チョウやホタルといった昆虫類の個体数が劇的に減少していることが判明しました。この衝撃的なニュースはSNS上でも瞬く間に拡散され、「子供の頃に見た景色が失われるのは寂しい」「自分たちが何とかしなければ」といった悲痛な声や危機感が募っています。
特に深刻な事態に陥っているのが、優雅に舞う姿で私たちを楽しませてくれるチョウ類です。今回の調査対象となった種の約4割において、国が絶滅危惧種として指定する際の指標を上回るペースで数が減っていることが浮き彫りになりました。専門的な観点から言えば、これは単なる減少ではなく、生態系そのものが崩壊の瀬戸際にある「赤信号」が灯った状態だと言えるでしょう。夜の風物詩であるゲンジボタルやヘイケボタルも例外ではなく、その光が途絶えつつある現状には胸が締め付けられます。
里山のバランスを壊す管理放棄と外来種の脅威
減少しているのは昆虫だけにとどまりません。身近な鳥であるハシブトガラスやヒヨドリ、さらにはノウサギやヤマアカガエルといった、かつては里山のどこにでもいた顔ぶれたちが軒並み数を減らしています。その一方で、イノシシやニホンジカ、さらにはアライグマに代表される外来種は、分布域を急速に拡大させているという皮肉な逆転現象が起きているのです。これは、かつて人と自然が共生していた「里山」という特殊な環境が、今まさに変質していることを物語っています。
日本自然保護協会の藤田卓さんは、こうした変化の背景に「管理放棄」と「開発による環境の分断」があることを指摘しています。ここでいう管理放棄とは、人口減少や高齢化によって人の手が入らなくなり、適度に手入れされていた林や草地が荒れ果ててしまう現象を指します。人間が自然と関わることをやめた結果、皮肉にも特定の生き物たちが住処を追われているのです。里山は人間が適度に関与することで維持される「二次的自然」だからこそ、放置されることは死を意味します。
私は今回の報告を受けて、今の私たちに課せられた責任の重さを痛感しています。便利な生活を追い求める影で、私たちは足元の多様な命を犠牲にしてきたのかもしれません。里山の環境を守る取り組みを強化することは、単に美しい景色を残すことではなく、日本の豊かな生物多様性を次世代へ繋ぐためのラストチャンスです。一刻も早い保護活動の拡大と、私たち一人ひとりが自然との距離感を見つめ直すことが、かつての賑やかな里山を取り戻す唯一の道ではないでしょうか。
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