静岡市を拠点に冠婚葬祭事業を展開する「あいネットグループ」が、地域で親しまれてきた総菜・弁当宅配の「楽多厨房」を傘下に収めるという大きな決断を下しました。2019年11月29日に事業譲渡の契約が成立し、同グループが新設した「株式会社楽多厨房」がその歩みを引き継いでいます。買収額は非公表ながら、約1億円にのぼると推測されており、地元企業による異業種連携の動きに熱い視線が注がれています。
SNS上では、お馴染みの葬儀社が食の分野へ本格進出することに対し、「身近な見守り役になってくれそう」「法事の食事がもっと便利になるのでは」といった期待の声が寄せられました。これまでは結婚式や葬儀といった「非日常」のイベントを中心に活動してきた同グループですが、今回の買収によって、地域住民の「日常」にまでそのサービスを広げようとしています。これは単なる規模の拡大ではなく、暮らしをトータルで支えるための布石と言えるでしょう。
業務効率化の「セントラルキッチン」構想とサービスの深化
今回の買収には、バックヤードの効率化という極めて合理的な狙いが隠されています。あいネットは静岡県を中心に多くの式場を有しており、これまで自社の「セントラルキッチン」で膨大な数の式典料理を賄ってきました。セントラルキッチンとは、複数の施設の料理を一括して調理する集約型拠点のことですが、業務の拡大に伴い従業員の負担が増加していたのも事実です。
そこで、通夜で提供されるオードブルや弁当の製造を新しく仲間入りした楽多厨房へ移管することに決めました。これにより、既存のキッチンは法事料理の製造に専念できるようになり、品質の向上と現場の負担軽減を同時に実現する見込みです。役割を分担することで、それぞれの分野でより洗練された「おもてなしの味」が提供されることになり、利用者にとっては非常に喜ばしい変化となるに違いありません。
「終活」の枠を超えた高齢者の生活支援ビジネスへの挑戦
特筆すべきは、一人暮らしの高齢者をターゲットにした弁当宅配事業の本格始動です。2019年春には、トレーニング機器や交流の場を提供する介護支援施設「あいりは追分」を開所しており、同グループはシニア世代のライフスタイルを支える体制を急速に整えています。単に人生の最期をプロデュースするだけでなく、健康維持から食事のケアまでを一貫して担う「生活全般のパートナー」への脱皮を図っているようです。
私は、この戦略こそが超高齢社会におけるサービス業の理想形だと考えます。冠婚葬祭業で培われた「人の心に寄り添うノウハウ」を、日々の食事宅配という見守り活動に転用できるメリットは計り知れません。年商210億円を誇る巨大グループの組織力と、地域密着型の宅配事業が融合することで、孤独死の防止や健康寿命の延伸といった社会課題の解決にも繋がるはずです。地元静岡から始まる、この温かい挑戦の成功を強く願ってやみません。
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