かつて「西の軽井沢」として愛された兵庫県の名峰・六甲山がいま、大きな変革の時を迎えています。神戸市は2019年11月18日、六甲山や摩耶山におけるIT企業のオフィス誘致を目的とした、大胆な規制緩和の実施を発表しました。豊かな自然に囲まれた静寂な環境が、クリエイティブな発想を必要とするビジネスマンにとって、最高のワークスペースとして生まれ変わる期待が高まっています。
今回の施策の舞台となるのは、六甲ケーブル山上駅を含む約430ヘクタールと、摩耶山の約15.5ヘクタールに及ぶ広大なエリアです。これまでは「市街化調整区域」という、無秩序な開発を抑えるための厳しい法的ルールにより、建物の新築や用途の変更が厳しく制限されてきました。しかし、2019年12月からはこの運用の見直しが行われ、特定の条件下でオフィス開設が正式に認められることになります。
眠れる保養所を「都市型創造産業」の拠点へ
山中にはバブル期までに建設された企業の保養所が200以上も点在していますが、現在はその多くが使われない「遊休施設」として眠っています。神戸市はこれらの施設を所有者から借りたり買い取ったりする企業を支援し、シェアオフィスやデザイン事務所として再生させる考えです。特に、ソフトウエア開発やゲーム制作、デザインといった、いわゆる「都市型創造産業」に特化した企業を呼び込む方針を打ち出しました。
SNS上では「満員電車から解放されて、山の上でコードを書くのは憧れる」「有馬温泉が近いなら、仕事帰りのリフレッシュが最高では?」といった期待の声が続出しています。自然と隣り合わせの生活は、現代のビジネスパーソンにとって最も贅沢な福利厚生といえるでしょう。市としても2020年度には改修費の補助制度を導入し、光ケーブルの敷設によるインフラ整備も並行して進めるなど、本気度が伺えます。
一方で、単なるオフィスの誘致に留まらず、歴史ある保養地の景観をいかに守るかも重要な視点です。今回の緩和では、新築こそ認められないものの、既存建物の改修や最大5割までの増築が可能となる柔軟な基準が設けられました。環境保全と経済活性化のバランスを模索するこの取り組みは、全国の過疎化に悩む観光地にとっての希望の光になるに違いありません。
筆者の見解としては、このプロジェクトは単なる「空き家対策」を超えた、新しい働き方の実験場だと捉えています。物理的な場所に縛られないIT企業にとって、六甲山の標高が生み出す澄んだ空気や神戸の街並みを見下ろす絶景は、唯一無二の付加価値となるはずです。2020年以降、この山から世界を驚かせるような斬新なアイデアやサービスが続々と誕生することを楽しみにしています。
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