2019年11月13日、日本の年金制度が大きな転換点を迎えようとしています。厚生労働省は、パートタイムなどの短時間労働者が厚生年金に加入できる対象企業を、現在の「従業員501人以上」から「50人超」へと大幅に引き下げる調整に入りました。この改革が実現すれば、新たに約65万人もの方々が厚生年金の網の目に入ることになります。将来の受給額を底上げし、社会保障の安定を図る狙いがある一方で、私たちの生活や中小企業の経営には多大な影響が及ぶことが予想されるでしょう。
現在、厚生年金への加入は、週20時間以上の勤務や月収8.8万円以上といった条件に加え、勤務先の企業規模が「501人以上」であることが求められています。厚生年金とは、国民年金(基礎年金)に上乗せして支給される2階建て部分の年金制度のことです。保険料は給与の18.3%ですが、これを会社と従業員で半分ずつ出し合う「労使折半」という仕組みが採られています。そのため、働く側にとっては将来の備えが手厚くなる一方で、手取り額が減少するという側面も持っているのです。
SNS上では、このニュースに対して「将来の年金が増えるのは嬉しいけれど、今の手取りが減るのは痛い」といった切実な声や、「配偶者の扶養から外れるラインが気になる」という不安の声が渦巻いています。特に対象となる可能性が高い小売業やサービス業の現場からは、急激な負担増を懸念する投稿も目立っているようです。厚労省の推計によれば、企業規模の要件を完全に撤廃すれば125万人が対象となりますが、まずは現実的な「50人超」を軸にして議論を深めていく構えといえます。
所得代替率の改善と中小企業への支援が鍵
政府がここまで適用拡大を急ぐ背景には、2019年8月に公表された財政検証の結果があります。現役世代の収入に対する年金額の割合を示す「所得代替率」は、現在の61.7%から、将来的に50%台前半まで低下する厳しい見通しが示されました。この数値を少しでも改善させるためには、国民年金のみの加入者を厚生年金へとシフトさせることが不可欠です。今回の「50人超」への拡大によって、所得代替率は0.3%程度改善されると予測されており、老後の安心を支える貴重な一歩となるでしょう。
しかし、この改革はバラ色の未来だけを約束するものではありません。中小企業にとっては、年金だけでなく医療保険の負担も同時に発生するため、経営を圧迫する大きなリスクを孕んでいます。厚労省の推計では、中小企業の従業員が加入する「協会けんぽ」などの財政が悪化する一方で、市区町村が運営する「国民健康保険」の財政は改善するという、複雑な影響も浮き彫りになりました。このように、制度の歪みをどこが被るのかという議論は、今後ますます激化していくと考えられます。
私個人の意見としては、多様な働き方が広がる現代において、企業規模によって年金の恩恵に差が出る現状は早期に解消すべきだと感じます。ただし、人手不足に悩む中小企業が保険料負担に耐えきれず、雇用を縮小させてしまっては本末転倒でしょう。年末までに固まる予定の中小企業支援策が、単なる一時しのぎではなく、企業の生産性向上を支えるような実効性のある内容になることを期待して止みません。2020年の通常国会に向けた議論の行方を、私たちは注視していく必要があります。
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