南米のベネズエラ政府と国営石油会社であるPDVSAが、民間の取引業者に対して異例の提案を行っていることが明らかになりました。2019年12月02日、ロイター通信が報じた内容によれば、同国は決済手段として中国の通貨である「人民元」の使用を求めているそうです。これまで主流だった自国通貨ボリバルや米ドルによる支払いが、現地の深刻な経済状況によって限界を迎えていることが浮き彫りになりました。
こうした動きの背景には、ベネズエラを襲う猛烈な「ハイパーインフレ」が存在します。ハイパーインフレとは、物価が爆発的に上昇し、貨幣の価値が紙クズ同然になってしまう恐ろしい現象を指す言葉です。買い物をするのに札束の山が必要になるほど混乱した国内経済に加え、米国による厳しい経済制裁が追い打ちをかけています。ドルを基軸とした国際的な送金ルートが封鎖され、政府は新たな逃げ道を模索せざるを得ないのでしょう。
SNS上では、このニュースに対して「ドル1強時代の終焉を感じる」「中国の影響力が南米でさらに強まりそう」といった驚きの声が相次いでいます。少なくとも4社がこの打診を受けたとされており、米国の金融システムを経由せずに決済を完結させる狙いは明白です。ベネズエラ中央銀行は、中国人民銀行の口座に少なくとも7億ドル、日本円にして約767億円相当の人民元を保有していると伝えられており、これを活用する算段です。
中国との蜜月関係と新たな国際決済の形
ベネズエラは以前から、原油の供給と引き換えに中国から約500億ドルもの巨額融資を受ける約束を交わしています。このため、PDVSAや中央銀行は中国国内の金融機関に口座を維持しており、資金移動の土壌はすでに整っていると言えるでしょう。経済的に孤立を深めるマドゥロ政権にとって、中国はまさに命綱とも呼べる存在です。米国の監視の目が届かない場所での取引は、彼らにとって生存戦略そのものなのです。
筆者の見解としては、この人民元シフトは一時的な凌ぎに留まらず、今後の国際情勢を左右する大きな転換点になると考えています。特定の国が米ドルのネットワークから排除された際、代替案として人民元が機能することを示した実例になるからです。経済制裁という外交カードが、皮肉にもドル以外の経済圏を育てる結果を招いているのかもしれません。国家が自国の利益を守るために振りかざす剣が、時に新しい世界の秩序を生んでしまうのです。
世界中の投資家や政治アナリストが、この奇策の成否を注視しています。もし人民元による支払いが定着すれば、他の中南米諸国や制裁対象国にとっても有力な選択肢となるはずです。2019年12月02日というこの日は、後世において「通貨の多極化」が進んだ象徴的なタイミングとして記憶されるかもしれません。混沌とするベネズエラ情勢ですが、その裏で進む通貨戦略の行方から、今後もしばらく目が離せそうにありません。
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