ドイツの政治地図を塗り替える存在として、常に世界中から注視されている極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が、新たな局面を迎えました。彼らは2019年12月01日まで開催された党大会において、長らく党を牽引してきたガウラント共同党首の後継者として、旧東独ザクセン州出身のクルパラ下院議員を選出しています。
もう一人の共同党首であるモイテン氏はそのまま留任し、新体制でのスタートを切ることとなりました。新党首となったクルパラ氏は、就任早々に「中道層の支持を得るには分別が必要不可欠である」と宣言し、これまでの過激なイメージを払拭するかのような、穏健な路線を強調する姿勢を見せているのが印象的です。
しかし、この「穏健化」という言葉を額面通りに受け取って良いのかは、非常に慎重に見極める必要があるでしょう。退任したガウラント氏は、かつてナチス時代を肯定するかのような過激な発言で幾度となく物議を醸してきた人物であり、その彼が自らの後継として強く推したのが、まさに今回のクルパラ氏だったからです。
SNS上では、このリーダー交代に対して「表向きの顔を変えただけのポピュリズムではないか」という厳しい声や、「既存政党への不満がAfDを押し上げている現実に目を向けるべきだ」といった複雑な反応が飛び交っています。党内の急進派組織とも密接な関係を持つ新党首の誕生は、単なる若返り以上の意味を含んでいます。
2021年の国政選挙を見据えた巧妙な包囲網と既存政党の危機
AfDが「分別」や「穏健」をアピールする最大の目的は、2021年秋に控える連邦議会選挙でのさらなる躍進にあります。旧東独地域での勢力拡大には成功したものの、旧西独地域の幅広い保守層を味方につけるためには、これまでの「極端な政党」というレッテルを剥がすことが、彼らにとっての至上命題なのです。
現在のドイツ政界は、メルケル首相率いる与党・社会民主党(SPD)の党首選で連立懐疑派が勝利するなど、混迷の度合いを深めています。私は、既存政党が内部抗争や政局に忙殺されるほど、現状打破を掲げるAfDが相対的に魅力的に見えてしまうという、極めて危うい「政治の空白」が生まれていると感じてやみません。
ガウラント氏が描くシナリオは、既存の保守連合が孤立した際に、最終的に自分たちと手を組まざるを得ない状況に追い込むというものです。連立の可能性を否定し続ける主要政党が、どこまでその一線を守りきれるのか。2019年12月02日現在の情勢は、ドイツ民主主義のレジリエンスが試される岐路に立たされています。
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