1970年11月19日現在、日本中が熱狂に包まれた日本万国博覧会の余韻のなかで、特に注目を集めているのが「万国博美術館」の存在です。この美術館は、国内外から集結した前衛的な芸術家や建築家たちの情熱が結晶化した場所であり、日本美術史における極めて重要な転換点となりました。お祭り広場に隣接する4階建ての館内には、世界40カ国以上から700点を超える至宝が集結し、人類の創造の歴史をダイナミックに俯瞰できる構成となっています。
展示は「創造のあけぼの」という原始・古代のテーマから始まり、20世紀の「現代の躍動」に至るまで5つの章で構成されています。特筆すべきは、東洋美術を軸に据えながら西洋美術と比較させるという、当時としては非常に「進取(しんしゅ)」、つまり自ら進んで新しい物事に取り組む精神に溢れた試みです。SNS上でも「これほど広範囲な文明の衝突を一度に目撃できる機会はない」といった驚きの声が相次ぎ、1日平均1万人が訪れる盛況ぶりを見せています。
光と構造が織りなす建築の美学
この建物の設計を手掛けたのは建築家の川崎清氏であり、照明デザインには石井幹子氏が名を連ねています。自然光を計算し尽くした採光システムや、作品展示の自由度を飛躍的に高めた新しい構造は、専門家の間でも「現代の美術館としての機能を完璧に備えている」と絶賛されました。こうした優れたハードウェアの存在があったからこそ、万博という一過性のイベントで終わらせるには惜しいという声が上がり、1977年からは国立国際美術館として再出発することが決定しています。
万博の会期が終了すると展示品の多くは各国へ返還されますが、美術館という「器」そのものが残ることは、大阪の文化振興において計り知れない価値を持つでしょう。私自身の見解としても、単なるパビリオン(展示館)の枠を超え、研究や収集の拠点として機能し続けることは、万博が掲げる「人類の進歩と調和」を体現し続けることに他ならないと考えます。未来の美術ファンにとっても、ここは聖地であり続けるはずです。
また、現在のロビーを彩っているジョアン・ミロの陶板壁画「無垢(むく)の笑い」も忘れてはいけません。もともとはガス・パビリオンを飾っていたこの名作は、国立国際美術館の所蔵第1号となる予定です。スペインが生んだ巨匠による力強い色彩と造形は、万博の記憶を次世代へと繋ぐ象徴的な存在です。万博美術館が歩んできた道は、まさに日本の現代美術が世界へと羽ばたくための滑走路であったと言えるのではないでしょうか。
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