野球界の未来を担う子供たちに、白球を追う喜びを伝えたい。そんな熱い想いから、東京六大学リーグの伝統校である早稲田大学野球部OB会が、画期的なプロジェクトを推進しています。2019年12月10日現在、野球人口の減少が深刻な課題となる中、練習拠点である安部球場を開放して子供たちが自由に「野球遊び」を楽しめる場を提供しているのです。
この取り組みは2016年から継続されていますが、2019年には史上初めて慶応義塾大学の野球部員も運営に加わりました。ライバル関係を超えた早慶の共演に、SNS上では「これぞスポーツの力」「伝統校が動くことに意味がある」と称賛の声が相次いでいます。競技の垣根を超えて協力し合う姿は、ファンにとっても胸が熱くなる光景でしょう。
2019年12月8日に開催された体験会には、小学3年生から6年生までの約130人が集まりました。驚くべきは、そのうち45人が女の子だったという点です。早慶の現役部員が「お兄さん役」となり、ルールをシンプルにした「ならびっこベースボール」や、大きな卓球ラケットでゴム球を打つ遊びなど、初心者でも夢中になれる工夫が随所に凝らされていました。
ハンカチ王子の願いと「投げる力」を伸ばす科学的アプローチ
会場には、早大OBである日本ハムファイターズの斎藤佑樹選手も駆けつけました。斎藤選手は子供たちと触れ合いながら、型にはめる指導ではなく、まずは楽しさを知る重要性を熱弁しています。早慶が手を取り合う姿を「大きな第一歩」と表現した彼の言葉からは、プロの舞台で戦うからこそ感じる、野球界の危機感と期待が伝わってきました。
実際、子供たちの体力低下は数字にも表れています。スポーツ庁の2018年度調査によれば、11歳男子のソフトボール投げの記録は、1989年度に比べて約5メートルも低下しているのが現状です。この事態を受け、プロジェクトを主導する日本ハムの大渕隆スカウト部長は、単なる野球の普及にとどまらず、スポーツ界全体の課題解決に挑んでいます。
今回のイベントでは興味深い「実験」も行われました。的当てや段ボール崩しといった遊びの前後で遠投の記録を測定したところ、わずか40分間の遊びで平均2メートルの記録更新が見られたのです。中には8メートルも記録を伸ばした3年生もおり、遊びの中で体を大きく使うことの有効性が、スポーツ科学の視点からも証明されました。
2001年度から中学校の軟式野球部員がほぼ半減している今、バットやボールを使える場所の確保や、保護者の負担軽減は避けて通れない課題です。編集者の視点としても、こうした「教えない指導」こそが、子供たちの潜在能力を引き出す鍵になると確信しています。早慶が灯したこの小さな火が、日本中のグラウンドへ広がっていくことを願ってやみません。
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