「誠実な企業でありたい」という言葉を掲げ、日本の小売り界の頂点に君臨してきたセブン&アイ・ホールディングスが、今まさにその根幹を揺るがす事態に直面しています。2019年12月10日、店舗で働くアルバイトやパート従業員に対し、長年にわたって残業手当の一部が支払われていなかった衝撃的な事実が明らかになりました。かつてイトーヨーカ堂時代から受け継がれてきた崇高な社是は、皮肉にも現在の経営実態とかけ離れたものになりつつあるようです。
今回の問題がさらに深刻なのは、労働基準監督署からの指摘を受けて事実を把握していたにもかかわらず、長期間にわたって公表も補填も行われていなかった点にあります。SNS上では「これが日本を代表する企業のやることか」「信頼していたのに裏切られた気分だ」といった厳しい声が相次いでいます。企業が成長する過程で最も大切にすべき「働く人への誠実さ」が軽視されていた事実は、ブランドイメージに深刻なダメージを与えたといえるでしょう。
相次ぐ不祥事と「生態系の王者」ゆえの慢心
不祥事はこれだけにとどまりません。2019年11月には、本部社員が加盟店に無断でおでんを発注するという前代未聞のトラブルも表面化しました。企業統治、いわゆる「コーポレートガバナンス」の欠如が叫ばれる中で、現場の店主たちからは「今回の件は氷山の一角に過ぎない」という切実な訴えが漏れ聞こえてきます。社是に謳われたステークホルダー(利害関係者)との信頼関係は、今や崩壊の危機に瀕していると断言せざるを得ません。
グループ全体で年間12兆円を超える凄まじい売上高を誇るセブン&アイは、取引先から見れば「消費分野の生態系のトップ」に君臨する絶対的な存在です。しかし、あまりにも巨大な力を持ちすぎたがゆえに、誰に対しても頭を下げる必要がないという「王者の慢心」が組織全体に浸透してしまったのではないでしょうか。かつて小売業界の優等生と称えられた面影は、不透明な対応が続く中で刻一刻と色あせていく一方です。
新体制の真価が問われる正念場
経済産業省で開催されている「新たなコンビニのあり方検討会」においても、セブン側の姿勢には疑問符が投げかけられています。2019年に入って表面化した24時間営業問題が議論の発端であるにもかかわらず、関係者によれば、会合での質問に対して同社は回答をはぐらかすような場面もあったといいます。問題の根本に向き合わず、その場をやり過ごそうとする消極的な態度は、さらなる不信感を招く結果となっています。
現在の経営陣が発足してから既に3年以上が経過しており、一連の混乱を旧体制の遺産として片付けることはもはや許されません。企業が存続するための基盤は、優れた商品力だけでなく、目に見えない「信用」という資産に支えられているはずです。セブンイレブンが再び「誠実な企業」として社会に受け入れられるためには、過去の過ちを真摯に清算し、全従業員や加盟店に対して誠意ある行動を示すことが急務であると私は考えます。
コメント