日本のインフラを支える鉄鋼業界に、大きな転換期が訪れています。JFEスチール傘下の電炉メーカー最大手であるJFE条鋼は、2020年1月までに鹿島製造所における鉄筋用棒鋼の生産を終了することを決定しました。今後は岡山県にある水島製造所へ機能を統合し、国内の生産体制を4拠点から3拠点へとスリム化させる方針です。
「棒鋼(ぼうこう)」とは、主にマンションやビルの構造材として欠かせない鉄筋コンクリート用の材料を指します。いわば建物の「骨組み」となる重要な資材ですが、近年の建築着工件数の減少に伴い、その出荷量は厳しい状況に置かれています。今回の決定は、時代の変化に合わせた生産効率の最大化を狙った、渡辺誠社長による英断と言えるでしょう。
五輪後の需要変化と「選択と集中」の加速
この合理化の背景には、深刻な需要の冷え込みがあります。普通鋼電炉工業会のデータによれば、2019年10月の国内出荷量は前年同期比で12.3%も減少しました。2020年の東京五輪・パラリンピックに向けた特需が落ち着きを見せ、大型再開発案件も一巡したことで、かつてのような爆発的な需要増を期待するのは難しいのが現状です。
SNS上では、このニュースに対し「時代の節目を感じる」「建設コストへの影響が気になる」といった、業界の先行きを不安視する声が目立ちます。一方で、無駄を削ぎ落とす経営判断を支持する意見も散見されました。JFE条鋼は2012年のグループ統合以降、常に体制の見直しを進めてきましたが、今回はさらに踏み込んだ変革が必要だと判断したようです。
今後、茨城県の鹿島製造所はビル建設などに使われる「形鋼(かたこう)」の生産に特化します。形鋼とは、アルファベットのHやLのような断面形状を持つ鋼材で、高い強度を誇ります。兵庫県の姫路製造所から一部の生産を引き継ぐことで、特定品目に特化した「高度な生産体制」へと進化を遂げる予定となっており、専門性の向上が期待されます。
私個人としては、今回の生産撤退は単なる縮小ではなく、生き残りをかけた「攻めの守り」であると評価しています。人口減少社会において、汎用品の大量生産から高付加価値品へのシフトは避けて通れません。伝統ある鉄鋼メーカーが、過去の成功体験に縛られず、2019年12月12日というタイミングで迅速に舵を切ったことは、日本の製造業全体に一石を投じるものとなるはずです。
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