2019年12月14日現在、私たちの働き方に大きな変革の波が押し寄せています。これまで「職住近接」が理想とされてきましたが、今、あえて都心から離れ、新幹線で優雅に通勤するスタイルを選択する人々が急増しているのです。その背景にあるのは、家族の介護や理想の子育て環境の追求です。
東京都内の企業に勤める20代の女性は、2017年に住み慣れた都心から北関東の実家付近へと拠点を移しました。きっかけはお母様が脳出血で倒れたことでした。高齢の祖父母だけでは心もとない、でも仕事は辞めたくない。そんな彼女を支えたのが、勤務先からの月額5万円という通勤補助制度でした。
彼女は毎朝、約1時間をかけて新幹線で都内へ向かいます。「満員電車のストレスから解放され、座って読書を楽しめる時間は、何にも代えがたいリフレッシュになっています」と語る笑顔からは、心のゆとりが感じられます。新幹線という公共交通機関が、単なる移動手段ではなく、自分を取り戻すための貴重なプライベート空間へと進化しているのでしょう。
介護離職を防ぐ企業の英断と、加速する「新幹線通勤」補助の輪
深刻な社会問題となっているのが「介護離職」です。総務省のデータによれば、2016年10月から2017年9月までのわずか1年間で、約10万人もの方々が介護や看護を理由に職場を去っています。企業にとって、経験豊富な優秀な人材を失うことは、計り知れない損失となります。
こうした危機感から、大手企業が続々と新幹線通勤の支援に乗り出しています。例えばソフトバンクは2018年10月より補助の上限を撤廃し、全額補助を決定しました。ヤフーも2016年から月額15万円を上限とした手厚い制度を導入しており、現在では80名もの社員がこの制度を利用して、自分らしい暮らしを実現しています。
「ワークライフバランス」という言葉が浸透して久しいですが、これは単に労働時間を減らすことではありません。大切な家族を守りながら、プロフェッショナルとして輝き続けること。企業が住む場所の選択肢を広げることは、現代における最強の福利厚生と言えるのではないでしょうか。
地方自治体の熱い視線!移住者がもたらす地域の活性化
一方、人口減少や空き家問題に直面する地方自治体も、この動きを歓迎しています。栃木県小山市や埼玉県熊谷市、新潟県湯沢町などは、独自の通勤費補助制度を打ち出し、積極的なプロモーションを展開しています。条件はあるものの、月額1万〜5万円程度の補助は、移住を検討する世帯にとって大きな後押しとなります。
2017年4月に長野県佐久市へ移住した角田研一さんも、自治体の補助を活用した一人です。39歳の働き盛りである彼は、お子さんの入学を機に、雄大な自然に囲まれた環境での子育てを決意しました。北陸新幹線で約1時間半の通勤時間は決して短くありませんが、「毎日帰るのが楽しみ」と語る言葉に、人生の質の向上が凝縮されています。
ネット上では「新幹線通勤なんて贅沢」という声も散見されますが、実際には都心の高い家賃を抑え、広い家でゆったりと暮らす経済的メリットは無視できません。JR東日本の統計でも、2018年度の北陸新幹線の定期利用者は2014年度比で26%も増加しており、このスタイルがもはや特殊なものではないことを証明しています。
私は、この「新幹線通勤」の広がりを、日本の停滞した空気を打破するポジティブな兆しだと捉えています。物理的な距離をテクノロジーと制度で埋めることで、地方には活気が戻り、都市部では多様な価値観が育まれます。住む場所と働く場所を切り離す勇気が、私たちの人生をより豊かで自由なものに変えていくはずです。
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