再生医療の分野で大きな期待を集めていたプロジェクトが、2019年12月13日に大きな転換点を迎えました。大日本住友製薬は、東証マザーズに上場するバイオベンチャーのサンバイオ社との間で締結していた、再生細胞医薬品「SB623」に関する共同開発およびライセンス契約を解消すると正式に発表したのです。
この「SB623」は、他人の骨髄液から採取した細胞を加工・培養して作られる「他家(たか)細胞」を用いた画期的な治療薬として注目されていました。特に治療法が限られている慢性期の脳梗塞患者に対する希望の光とされてきましたが、米国などで実施されていた臨床試験(治験)の結果が振るわず、両社はデータの解析を進めながら今後の慎重な議論を重ねていた経緯があります。
専門用語としての「治験」とは、新しい薬を市場に出す前に、その効果や安全性を人間で確認するための非常に重要なプロセスを指します。今回の契約解消は、この治験において期待された有効性が十分に証明されなかったことが主な要因と見られており、製薬業界における創薬の難しさを改めて浮き彫りにした形といえるでしょう。
SNS上では「サンバイオショックの再来か」と身構える投資家の声や、「再生医療の未来を信じていただけに残念だ」という落胆の意見が数多く飛び交っています。バイオ株特有のハイリスク・ハイリターンな側面が強調される結果となり、市場には動揺が広がっていますが、一方でサンバイオ側は独自に開発を継続する意向も示しており、一縷の望みをつなぐファンも少なくありません。
編集者としての私見ですが、今回の提携解消は単なる一つの契約終了に留まらず、日本のバイオベンチャーが直面する「死の谷」の深さを象徴しているように感じます。巨額の資金が必要な再生医療において、大手製薬会社のバックアップを失う痛手は計り知れません。しかし、失敗を糧にデータを再精査し、より精度の高い治療法へと昇華させることこそが、真の医学的進歩に繋がるはずです。
今後は、サンバイオが自社単独、あるいは新たなパートナーと共に、この「SB623」をどのように立て直していくのかが焦点となるでしょう。患者さんやその家族の期待を背負っている以上、この挫折を終着点とせず、次なる一歩を踏み出す勇気に期待したいところです。2019年12月13日のこの決断が、将来的に再生医療の成熟に向けた必要なプロセスだったと振り返られる日が来ることを切に願っています。
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