東北地方の地方銀行が、地域の命を支える「医療分野」のコンサルティング事業を劇的に強化しています。背景にあるのは、本業である融資業務の収益低迷という厳しい現実です。各行は専門チームを組織し、病院経営の改善や新規開業のサポートに乗り出しました。
例えば宮城県に本店を置く七十七銀行では、2019年10月01日から専門組織「ヘルスケアチーム」の体制を3名に増員して強化を図っています。外部のコンサルティング会社でノウハウを吸収した精鋭たちが、データに基づいた緻密な経営分析を行っているのです。
高齢化が進む「街のクリニック」を守る事業承継の舞台裏
今、最も切実な課題となっているのが「診療所」の存続です。診療所とは、患者が入院するためのベッド(病床)が19床以下の医療施設のことを指します。厚生労働省の調査によれば、こうしたクリニックで働く医師の平均年齢は59.6歳に達しているのが現状です。
特に深刻なのが、2割もの医師が70歳を超えているという事実でしょう。長年地域に根ざしてきた先生方が「引退したくても、患者さんを路頭に迷わせるわけにはいかない」と悩む姿が浮き彫りとなっています。SNSでも「地元の名医が閉院して困った」という声は絶えません。
こうした中、銀行によるM&A(合併・買収)や事業承継の支援が光っています。2018年04月頃、七十七銀行にはある医師から「地域のために診療所を残したい」という切実な相談が寄せられました。銀行側は医療機器メーカー等と連携し、無事に後継者へのバトンタッチを成功させています。
単なるコスト削減では解決しない医療現場のリアリティ
医療機関の承継は、一般企業よりもハードルが高いのが特徴です。当然ながら医師免許が必要であり、さらには「内科」や「整形外科」といった専門科目が一致しなければなりません。条件が合わない場合は、医療法人への売却という選択肢も検討されることになります。
しかし、経営改善を求める際に「コストカット」ばかりを優先するのは危険です。命を扱う現場では、単純な経費削減はスタッフの意欲低下を招き、医療の質を下げかねません。現場のプライドを尊重しつつ、労働の質を高める提案こそが、今、地銀に求められている手腕なのです。
北日本銀行では「医療に強い銀行」をスローガンに掲げ、行員への徹底した教育を行っています。岩手県内での新規開業の3割以上に携わるなど、地域密着の強みを存分に発揮しています。SNS上でも、銀行がここまで医療に深く関与していることへの驚きと期待が広がっています。
迫りくる倒産リスクと、地域金融機関としての覚悟
一方で、楽観視できない状況も続いています。2018年01月01日から2018年12月31日までの1年間で、全国の医療機関の倒産は40件に達しました。これは前年比で6割増という衝撃的な数字であり、東北地方でも経営難に陥るケースが目立ち始めています。
国は2019年09月26日に、全国424の公立・公的病院に対して再編や統合の議論を求めるリストを公表しました。今後は民間病院もその波に飲まれることが予想されます。人口減少が進む地方において、医療インフラをどう守るかは、地域経済の死活問題に直結するでしょう。
私は、地銀が金貸しという枠を超え、地域のコンシェルジュとして動くのは素晴らしい変化だと考えます。専門知識を備えた銀行員が医師の伴走者となることで、救われる命や守られる日常が必ずあるはずです。東北の地銀が見せる「本気度」に、今後も目が離せません。
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