本日2019年6月24日は、戦後歌謡界における巨星、美空ひばりさんの命日にあたります。その圧倒的な歌唱力と表現力で、多くの人々の心を捉え続けた「昭和の歌姫」ですが、平成元年である1989年に亡くなられてから約30年が経過し、若い世代の方々の中には、彼女の楽曲をほとんどご存知ない方も少なくないかもしれません。ひばりさんが体現していた、あの「昭和の哀歓」は、時代と共に人々の記憶から少しずつ薄れ、世の中の空気は軽やかさを増してきたと言えるでしょう。
そのような時代の流れの中で、美空ひばりさんと同じく本日が命日である、もう一人の女性の存在は、残念ながらほとんど忘れ去られようとしています。ちょうど50年前の1969年、立命館大学の学生であった高野悦子さんが、自ら命を絶たれました。彼女の死後に刊行された手記『二十歳の原点』は、1970年代を中心に多くの読者を獲得し、ロングセラーとなった作品で、今でも書棚にこの本が眠っている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
今この手記を読み返してみると、高野さんは、非常に硬質で生真面目な言葉でご自身を追いつめ、苦悩されていた様子が伝わってきます。当時の学生運動の渦中に身を置きながら消耗し、恋の悩みにもがき、読書や学習の中に救いを求め続けていました。その記述には、「私の敵は独占資本だ」「自らのブルジョア性に向けて叫んだ」といった、当時の社会情勢や思想を色濃く反映した言葉が綴られています。若者が自らのアイデンティティや社会との関係に真剣に向き合い、苦悶していた「時代」の持つ残酷なまでの切実さが、読む者の胸を打ち、多くの読者の共感を呼んだのです。
この『二十歳の原点』は、2018年に「コミック版 二十歳の原点」として現代に蘇りました。現代の女子大生が1969年にタイムスリップし、当時の若者たちの考え方や情熱に触発されていくというストーリーです。ひと昔前の物語が、時を経て、このような形で再び息を吹き返すのは、なんとも不思議で感動的なことではないでしょうか。まさに、過去の出来事や感情が、形を変えて現代に影響を与え続ける「時空を超える力」を感じさせます。
そして、この「時空を超える力」は、美空ひばりさんの歌声にも通じるものがあります。時折、ふと耳にする彼女の楽曲には、現代の私たちにも強く胸に響く、普遍的な「哀愁」と「喜び」が凝縮されています。彼女たちの作品が持つ力は、単なる過去の記録ではなく、時代や世代を超えて人々の感情を揺さぶる、まさに「時代のエッセンス」と言えるでしょう。私たちは、これらの作品を通して、昭和という時代が内包していた情熱や葛藤、そして人間的な深みを再認識し、現代の生き方について考えるきっかけを得られるのではないでしょうか。
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