2020年3月、JR山手線に約半世紀ぶりとなる待望の新駅「高輪ゲートウェイ駅」が誕生します。この駅舎は、2019年11月末に完成した国立競技場の設計も務めた建築家・隈研吾氏が手掛け、折り紙をヒントにした白い大屋根が特徴的です。骨組みに木材を多用した「和」の温もりを感じさせる空間は、早くもSNSで「現代的なのに落ち着く」「夜のライトアップが楽しみ」と大きな注目を集めています。2024年に向けてオフィスビルや国際会議場も整備され、街は劇的な進化を遂げるでしょう。
高輪ゲートウェイという名称には、この地が古来より「江戸の玄関口」として栄えた歴史への敬意が込められています。その象徴ともいえるのが、1710年(宝永7年)に設置された「高輪大木戸(たかなわおおきど)」の石垣です。かつて東海道から江戸の府内へ入るための重要な関所として機能していた場所であり、当時は見送りや出迎えの人々で常に賑わっていました。現代でも高さ3メートルを超える威風堂々とした石垣が残っており、往時の活気を今に伝えています。
消えゆく名所「提灯殺し」と歴史を刻む泉岳寺
新駅誕生の陰で、2020年4月にその役割を終えようとしているユニークな場所があります。それは「提灯殺し」の異名を持つ、天井が極端に低いガード下のトンネルです。高さが1.7メートルから2メートルほどしかなく、タクシーの屋根にある社名表示灯(提灯)がぶつかってしまうことからそう呼ばれてきました。明治時代、海上に鉄道を通すための水路として造られたこの道も、2024年には高さ4メートル以上の立派な連絡道路へと生まれ変わり、街の利便性は飛躍的に向上するはずです。
高輪の魅力は最先端の再開発だけではありません。大木戸跡から少し歩くと、「忠臣蔵」で名高い赤穂浪士が眠る「泉岳寺」が姿を現します。1612年(慶長17年)に徳川家康が創建したこの寺院には、今も大石内蔵助ら四十七士の墓碑があり、絶えず線香の煙が立ち上っています。筆者としては、どれほど街の景色が近代的なビル群に変わったとしても、こうした深い歴史の香りが共存し続けることこそが、高輪という街の真の価値であると強く感じています。
地元商店会の石川進会長は、新駅開業によって羽田空港からもアクセスしやすい「東京の新拠点」になることに期待を寄せています。江戸時代からの情緒と、世界基準の利便性が融合する唯一無二のエリアとして、高輪は新たな一歩を踏み出そうとしています。高層ビルを見上げる足元に、かつての旅人が歩いた石畳の記憶が息づく――そんな重層的な街歩きを楽しめる日は、もうすぐそこまで来ています。
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