2019年の東京都政を象徴するのは、私たちの「当たり前の日常」を揺るがした数々の出来事でした。特に2019年10月12日に上陸した台風19号は、都民の防災意識を根本から問い直す衝撃を与えています。大田区や世田谷区を中心に多摩川の増水が深刻化し、約900軒にも及ぶ建物が浸水被害に見舞われました。SNS上では「まさか多摩川が溢れるなんて」といった悲痛な声や、避難所の状況をリアルタイムで共有する投稿が溢れ、かつてない緊迫感が首都を包み込んだのです。
東京都が災害対策本部を設置したのは、2000年の三宅島噴火以来のことでした。多摩川沿いでは約半世紀もの間、大規模な浸水被害が発生していなかったため、住民の間で水害に対する危機感が薄れていた面は否めません。今回の事態を受けて、堤防の未整備区間の解消や排水設備の強化といった「防災インフラ」の課題が浮き彫りとなりました。自然災害の脅威を前に、私たちは改めて都市の脆弱性を認め、次なる備えを急がなければならない局面に立たされています。
また、奥多摩町の日原地区では現在も都道の通行止めが継続しており、約100人が暮らす集落が孤立に近い不自由な生活を強いられています。車での移動が制限されるなか、住民の方々の疲弊は限界に達していることでしょう。都は2020年1月から仮道路の整備に着手する予定ですが、復旧の目途が立たない現状には、一刻も早い支援が求められます。都政には、華やかな都市開発だけでなく、こうした中山間地域の安全確保にも光を当てる責務があるはずです。
五輪マラソンの札幌移転とIT革命の旗手、宮坂副知事への期待
一方で、2020年の東京五輪・パラリンピックに向けた祝祭ムードに冷や水を浴びせたのが、IOC(国際オリンピック委員会)によるマラソン・競歩会場の札幌移転発表でした。2019年10月に突如として打ち出されたこの方針に対し、小池百合子知事は「合意なき決定」と強い不快感を表明しています。これまで準備に奔走してきた関係者や都民の落胆は計り知れず、SNSでも「東京で開催する意味とは何か」という議論が紛糾しました。五輪の意義が、改めて問われる年となったのです。
しかし、未来への希望を感じさせる動きも加速しています。2019年9月には、元ヤフー社長の宮坂学氏が副知事に就任するという、驚きの人事がありました。大手IT企業のトップが行政の要職へ転身するのは極めて異例ですが、これは都政の「デジタルトランスフォーメーション(DX)」、つまりデジタル技術による行政サービスの変革を本気で進めるという決意の表れでしょう。民間でのスピード感と柔軟な発想が、硬直化した官僚機構にどのような風穴を開けるかが注目されます。
特に、2020年に商用サービスが本格化する次世代通信規格「5G」の活用は、東京の競争力を左右する鍵となります。5Gとは、超高速・低遅延・多数同時接続を実現する新しい通信インフラのことです。これを自動運転や遠隔医療、防災システムに組み込むことで、世界一のスマートシティを目指す宮坂氏の手腕には大きな期待が寄せられています。災害の教訓を糧に、最新技術で都民の命を守り、暮らしを豊かにする。2019年はその転換点として記憶されるでしょう。
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