歌人として活躍されている笹公人(ささ・きみひと)さんが、ご自身の人生を変えたという大林宣彦(おおばやし・のぶひこ)監督との運命的な出会い、そして映画出演という貴重な体験について語ってくださいました。笹さんが大林監督の作品と出会ったのは、小学生の時。幻想的な世界観が魅力の『HOUSE』(ハウス)をはじめ、『転校生』、『時をかける少女』といった名作群をテレビでご覧になり、その抒情性(じょじょうせい)やノスタルジーの世界に深く魅了されたといいます。もし大林映画に出会っていなければ、短歌を詠むことはなかっただろうと断言されるほど、その影響は計り知れません。
20代の頃には、大林監督の映画の舞台としても知られる**尾道(おのみち)**のロケ地を巡礼中に、偶然にも監督と二度も遭遇するという奇跡的な出来事を経験されました。その後、第1歌集となる『念力家族』を出版された際に監督へ謹呈したことをきっかけに、文通のような交流が始まり、ついに2008年、映画『その日のまえに』への出演を果たすことになったのです。この作品は、主演の永作博美(ながさく・ひろみ)さん演じる「とし子」の兄という重要な役どころで、南原清隆(なんばら・きよたか)さん扮する「とし子の夫」と妹の結婚に反対するシーンなどに登場されました。
撮影当日は、老けメイクを施され、監督の演技指導を受けることになり、数十名のスタッフやキャストが見守る中で「よーい、スタート!」の声がスタジオに響き渡ると、これまでの人生で一番の緊張に襲われたそうです。ベテランの南原さん、永作さんが待機する中、体がガチガチになり声が震え、体の動きを意識するとセリフが飛び、セリフに集中すると演技を忘れてしまうというNG(エヌジー)を連発してしまいました。周囲の方々へ申し訳ない気持ちから、声はさらに上ずってしまったといいます。まさに無我夢中で演じきり、「カット!」の声に恐る恐る顔を上げると、監督が笑顔で両手で丸(マル)をつくってくださっていたそうです。この時の、緊張から解放された安堵感と、素人が映画の現場に参加したことへの申し訳なさと晴れがましさが入り混じった感覚は、死ぬまで忘れられない宝物だとおっしゃっています。
🎬黒澤明監督の遺志を継いだ「戦争三部作」の魂の叫び
その後、大林監督は、巨匠・黒澤明(くろさわ・あきら)監督から託された「映画には必ず世界を戦争から救い、平和に導く美しさと力がある」という熱い想いを受け継ぎました。そして、東日本大震災後の日本を舞台にした『この空の花 ─長岡花火物語』、戦時下の日本を描いた『野のなななのか』、そして1917年の尾道を舞台にした『花筐(はながたみ)/HANA-GATAMI』という、映画ファンから「大林映画の戦争三部作」と呼ばれる作品群を完成させます。
特に2017年に公開された『花筐』は、クランクイン(撮影開始)の直前に監督ご自身の肺ガン(ステージ4)が判明し、医師から余命3か月の宣告を受けるという、文字通り命がけの撮影となった作品です。その映像には、生と死、愛、友情など、人間の様々な営みと、それらを包み込む自然を、厳しくも慈愛に満ちた眼差しで捉えた、**鬼気迫る(ききせまる)**迫力が感じられます。作中で、満島真之介(みつしま・しんのすけ)さん演じる高校生の鵜飼(うかい)が叫ぶ「青春が戦争の消耗品だなんてまっぴらだ」というセリフは、他の監督の作品であれば少々青臭く浮いてしまうかもしれませんが、この『花筐』の中では、黒澤監督から大林監督へと受け継がれた平和への魂の叫びとして、見る人の心に深く響くことでしょう。笹さん自身、このセリフが今も心の中でこだましていると語られています。
🕊️最新作『海辺の映画館』への期待と平和へのバトン
そして来年、大林監督の最新作となる『海辺の映画館―キネマの玉手箱―』が公開される予定です。舞台は、まさに原点回帰とも言うべき、監督の故郷である尾道。さらに、世界的音楽家であるYMOの高橋幸宏(たかはし・ゆきひろ)さん、「新しい地図」として新境地を開拓した稲垣吾郎(いながき・ごろう)さんも出演されるとのことで、その期待に胸が高鳴ります。
現代においても、世界情勢はきな臭い、つまり不穏で一触即発の状況が続いています。このような時代だからこそ、黒澤監督から大林監督へと渡された「映画の力で世界を平和に導く」というバトンが、今、非常に大きな意味を持つのではないでしょうか。映画は、娯楽であると同時に、時に私たちの価値観を揺さぶり、深く考えるきっかけを与えてくれる力強いメディアです。大林監督の作品は、常に平和へのメッセージを根底に持ち続けており、その前衛的でありながらポップな表現は、私たちに改めて愛と平和について深く問いかけている、と私は強く感じています。
🗣️【SNSでの反響】大林監督作品への熱い想い
この記事に触れた読者やSNSユーザーからは、大林監督の作品に対する熱い想いや、笹さんの貴重な体験への共感が集まっています。「『時をかける少女』のノスタルジーは確かに唯一無二。短歌に繋がったという話に感動しました」「『花筐』は本当に衝撃的な作品でした。監督の命がけの情熱が画面から伝わってきて、鵜飼くんのセリフは忘れられません」といった声が寄せられています。特に、大林監督作品の特徴である抒情性とノスタルジーというキーワードに引き寄せられたファンが多く、笹さんの経験を通じて改めて監督の魅力を再認識した、というコメントも多数見受けられました。
笹さんが短歌の中で詠まれたように、青春の光と影、そして過ぎ去った日々の美しさを描き出す大林映画は、多くの人々の心に深く刻み込まれています。
> 「転校生」 8ミリのカメラに手をふる一美(おれ)がいたモノクロームのあの夏の日
の笹 公人 (歌人)

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